「女性が輝く社会」の何が問題なのか
すべての女性が輝く社会づくり本部の女性活躍加速のための重点方針 2015によると、安倍内閣が推し進めるいわゆる「すべての女性が輝く社会」とは
人口減少社会を迎える中で、我が国の持続的成長を実現し、社会の活力を維持していくためには、最大の潜在力である「女性の力」の発揮が不可欠である。「女性の力」の発揮は、企業活動、行政、地域社会等の現場に多様な視点や創意工夫をもたらすとともに、社会の様々な課題の解決を主導する人材の層を厚くし、女性のみならず、すべての人にとって暮らしやすい社会づくりにつながる。
とあります。
女性に期待し過ぎな面もありますが*1、大筋では同意します。
- 目的1.我が国の持続的成長を実現する
- 目的2.社会の活力を維持していく
- 手段 最大の潜在力である「女性の力」を発揮させる(ための仕組みづくり)
人口の半分は女性ですので、それを意図的に排除してしまっては、単純に男性だけ、つまり、半数の人間で意思決定する事になります。
それよりは女性も加わり、その中から優秀な者をチョイスして、彼らをリーダーとして意思決定してもらうほうがいいですね。
しかし、目的・手段は良いのに、「仕組みづくり」が全然イケていません。それを今回説明します。
実力主義が放棄される
一番の問題点はこれです。
- 女性80点、男性70点 で 男性を採用する
- 女性80点、男性70点 で 女性を採用する
上は「実力主義」ではありません。明らかに男性をえこひいきしています。「男性優遇」です。下は「実力主義」です。男性も女性も点数が高ければ採用されます。
上の「実力主義」ではない状況から、下の「実力主義」へ是正するのであれば大歓迎です。私も、あなたも、誰もが大賛成、異論はないと思います。
逆に上の「実力主義」ではない状況を放置するのはよろしくないです。実力のない者が意図的に採用され、実力者が排除されるのは、男性であろうと、女性であろうとあってはならない事です。
特に、国家公務員の上級職、企業の取締役、弁護士、政治家などの比較的高給職は絶対に実力主義でなければなりません。高給であるが故に「ミス」も「パス」も大きな結果となって出てくるからです。
しかし、安倍政権の考える「女性が輝く社会」とはどうやら
- 女性は70点、男性80点 で 女性を採用する
の社会であるようです。
つまり、「実力主義」の否定ですね。しかも、社会的地位の高い高給職に限って、「女性3割」などの数値目標を設定し、またはしようとしています。
数値目標ですよ?結果さえ出せば、過程は二の次だ!って事ですよ?
これはヒドいですね。
いつの時代の、どこの国に「実力主義を否定する」政治や統治をして上手く言った例があったのでしょうか??実力のない2代目、3代目が悪政を敷いて国を潰す史実は多くありますが、実力のない2代目、3代目が悪政を敷いて国を大きく発展させるなんてのは私は知りません。
それとも実力のない2代目、3代目でも余裕で治められる国が今の日本という事なんでしょうか?実力のない者を要職に就けて居られるほど、政府も、官僚も、司法も、企業も余裕あるように見えないんですけどね。
さて
- 女性は70点、男性80点 で 女性を採用する
と書きました。
でも本当にそんな事が行われているのでしょうか??
ここに驚愕のデータがあります。
何と、政府自らが誇らしげにこの異常なデータを見せびらかしています。
http://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/files/w5_h270428.pdf
平成27年度の女性国家公務員の総合職割合が10%以上増えてます。
ここまでハッキリと「女性優遇」を見せつけられると、逆に言葉もありません。
え?女性優遇ではない?
これを「女性優遇ではない」とすると、
- 女性の能力が劇的に上がった
- 採用要件を変更したがたまたま女性に非常に有利になった
という事になりますが、はて、女性の能力が安倍政権が発足して3年足らずの間に劇的に上がったのでしょうか。
例えば女性閣僚の不祥事は記憶してますが、女性閣僚が何か功績を残したのでしょうか?
それとも、女性閣僚と女性国家公務員は資質が違うので、女性閣僚の能力はともかく、女性国家公務員は劇的に能力が上がっているということなのでしょうか?
やっぱり、採用要件を変えたのでしょうかね。それがたまたま女性に有利に働いたということでしょうかね?
女性優遇のしわ寄せを男性に強いている
大きく離れた次点で問題なのはこれです。女性を優遇すれば、その分だけ男性は冷遇されるのです。
1人を「女性だから」という理由で採用することは、1人を「男性だから」という理由で不採用にすることを意味しています。
それって、今まで女性が「不当だ!」としてきた女性差別と同じベクトルですよね??同じ事を男性に対してするんですか?なぜ「女性だから」という理由で採用することは良くて、「男性だから」という理由で採用することがいけないのか、理屈が通りません。
「今でも女性差別は残っている!」と言うかもしれませんが
- 具体的な数値目標を発表されていて、データにまで「女性優遇」が歴然と表れている男性差別 と
- 数値目標など見当たらないが、データでは「そうらしい」と認められる女性差別*2
とでは、どちらが悪質かは考えれば分かることです。
国民の税金は男女とも平等に支払っています。当然、享受できるサービスも男女で差があるのはおかしいはずです。*3
女性の社会進出を促すのは大いに結構で、その為に協力するのはやぶさかではないです。しかし、男性を冷遇した結果として女性の社会進出を図るのには全く協力できません。
女性が-10だったのを0に、男性が20だったのを0にするのは大いに結構ですが女性が-10だったのを10に、男性が20だったのを-10にするのは全く賛成できません。
女性は弱者ではない
政府主導の「女性が輝く社会」とは少しズレますが、この視点が欠落しているのも問題です。
女性が男性よりも弱い、ってホントですか??
- 女性は東大に入れます(男性はお茶の水女子大に入れませんけどね)
- 女性には参政権があります
- 男女雇用機会均等法があります
- 男性は入れて女性が入れない所はありません*4
どこに「弱さ」があるんでしょうかね??
さっぱりわかりません。
体力??
確かに体力では男性は比較的女性よりも優れているでしょう。
しかし、戦国時代と違って、今は体力ではなく頭脳の時代です。頭脳で価値を見出して、稼いでいく時代です。今の時代、オリンピック選手は強者ではなく、選手を活用して莫大な広告費を得ている国際オリンピック委員会の方が強者です。
つまり、体力的な弱さ=弱者ではありません。
頭脳??
そんな事言ったらフェミニストこそ怒りそうですけど(汗)
私は女性が生まれつき頭脳において男性に劣っているとは思いません。
稼ぐ能力?
そうですね。女性のほうが男性よりも低いでしょう。でも男性でも稼げない人も居るし、女性でもメチャ稼いでる人も居ます。なので、「傾向がある」位の話であって、「確かにそうだ」とは言えないという事は心に留めておく必要があります。
傾向については、男性は生まれた瞬間から「一家を支える収入を得る」事を期待されて教育されるからです。一方で、女性は生まれた瞬間から、「妊娠して元気な子どもを生む」事を期待されて教育されるからです。良いか悪いかは別にして。
その結果、成人した男性と女性の「稼げる能力」の平均に差が出てくるのは当然です。男性の方が、幼い頃からそういった訓練をしてきているわけです。*5だったらまずは女性も「稼げる能力」を身につける教育をする。これが先じゃありませんか??
「稼げる能力」とは
- リーダーシップ
- 論理的思考力
- 抽象的思考力
- リスク管理
- 折衝力
などですが、これらを訓練するチャンスを女性に与えるのが先じゃないですか?例えばクラスの学級委員を女性にやらせてみるとか、生徒会長を女性にするとか、です。最終学歴に対する男性のプレッシャーも半端無いので、女性にも「良い大学を目指す」という動機を持ってもらいます。
このようにして、10年位掛けて、教育の思想や社会の通念を根本から変えていかないと上手く行かないのでは?いきなり女性に要職を与えたからといって、急には「稼げる能力」は身につきません。
なので、全然能力が足りていないある女性を要職に登用した所で、その女性も、周りの人も、結果を受ける周りの関係者も迷惑するだけです。
弱者を鍛えずに、えこひいきして彼らを要職に引き上げた所で、良い事は一つもありません。
まとめ
まとめると
- 実力主義が放棄される
- 女性優遇のしわ寄せを男性に強いている
- 女性は弱者ではない
という点で、安倍政権の「女性が輝く社会」という政策はよろしくないわけです。
であれば
- 実力主義
- 男性にしわ寄せが来ない
- 男女関係なく
「女性も輝く社会」を目指せばよろしい訳です。
具体的には
- 「稼げる能力」を女性にも教育する
- 高給職種への認知を上げ、応募数を増やす(採用数じゃーないです)
- 女性の就業への妨げになる障害を取り除く(育児休業や保育園の充実、ベビーシッターの拡充など)
です。
まぁ、長々と説明しましたけど「結果の平等をやめい」ということですね。
*1:今まで女性は中枢を担ってこなかったのに、なぜ女性が中枢に加われば「課題解決を主導できる人材の層が厚くなる」のか根拠が不明。女性優遇により不採用にされた男性は層から省かれるので、層の厚さはプラマイ0になります。
*2:例えば国家公務員試験は、男性は女性申込者よりも3倍多いので、国家公務員の10人中7~8人が男性であっても女性差別ではない。つまり、申込者数の男女比率を見ないと女性差別と認められないが、ほとんどの企業は「役員登用試験の男女別申し込み者数」を公表していないだろう
*3:経済的弱者と強者に差があるのは、累進課税に見られるように仕方ないと思うが、女性=弱者じゃないので、合理性がない
*4:私有地は別。トイレや温泉は、女性は入れて男性は入れない女湯などあるので、これも別。
*5:もちろん男性でも訓練してこない人も居るし、女性でも訓練してきた人も居る