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鬼人事クマさんのブログ

御社の社畜を探します!採ります!育てます!

企業が本当に求める人材って何なの?!(2)

こんにちは!
さて、前回の続き。前回の叫びは「人事さん、本当に欲しい人材像ってなんすか?!」でした。
まとめると

  • 現状 → 似たり寄ったりの「求める人材像」
  • 原因 → ??? ← 就活で学生が苦労する根本原因

というお話をしました。
今回は「???」とはなにか、つまり、似たり寄ったりの「求める人材像」になってしまう原因は何かを考えます。

今日の叫び

求める人材像?そんなん、決められっかよ!

採用に力を入れている企業の「求める人材像」

なぜ似たり寄ったりの「求める人材像」になってしまうか??を考えるためには、似たり寄ったりになっていない「求める人材像」を掲げている企業はあるか?を見てみると良いです。

日本人はなぜシャイなのか?を考えるために、シャイでない日本人はどのような特徴があるか?を考える手法です。
(この考察手法なんて言うんでしょうね〜?)

さて、似たり寄ったりになっていない「求める人材像」になっていない企業とは??
これは結構探すのが難しいのです。

結論からいうと、(採用に力を入れなくても応募者が来る)大企業は似たり寄ったりになる傾向が強く、パチンコ業界や外食業界など人材の採用に苦心している企業の方が似たり寄ったりになっていない「求める人材像」になっている可能性が高いです。

そして一番採用に対して力を入れているのは、ズバリ「リクナビ」や「毎日コミュニケーションズ(マイコミ)」など、就活メディアを運営する企業でしょう。

「シューカツのリクナビ」が採用活動どヘタクソでは営業活動に支障を来します。
しかもリクルートのように人気企業でありながら、4年生の年明けもまだ採用活動をしているなんて状態が1年でもあったら、「リクナビ」や「リクナビNEXT」などのあらゆるメディアの信用を失います。

「絶対に(新卒)採用活動を成功させなくてはならない」

リクルートや毎日コミュニケーションズなどの企業の採用担当のプレッシャーは半端ありません。

ただ頭数を合わせる採用をすれば良いわけではなく、新卒採用も出来るだけスマートに、出来るだけハイパフォーマンスに仕上げ、他の企業に売れるクオリティでなくてはならないのです。

さて、実際のリクナビ掲載の株式会社リクルートホールディングスの採用ページの「求める人材像」を見てみます。

【必須条件】
  ●世の中にインパクトを与えるWebサービスを創造したい方
  ●下記Webサービスに関わる職種にて専門性を高めていきたい方
    -プロダクトマネージャー
    -開発ディレクション
    -Webマーケティング
    -UXデザイン
    -データ解析
    -エンジニア
    -グローバルエンジニア


【推奨条件】
・インターネット領域でのビジネスや、サイト制作などの経験がある方
・ビジネス経験はないが、Web プロデュース・マーケティングに興味がある方
・授業や趣味、インターンなどで、プログラミング・データ解析経験がある方(レベルは問わない)
・情報工学や、Webデザイン・通信・ネットワーク系の研究を行っている方

皆さんに高い要望をする分、会社としてもできる限り成長の機会、学習の機会を提供します。
その機会を最大限に活用して、新しい価値を社会に生み出して下さい。

さすがはリクルートさんです。
欲しい人材像がある程度明確に書かれていますし、【推奨条件】を付すことで、暗示的に候補者を絞っています。
つまり、これを見て「WEBに全く興味のなく、経験もない文系」はまず応募してこないはずです。

その結果、欲しい母集団だけを集めることが出来、その母集団にリソースを傾けることで他社よりも優秀な学生を獲得できるのです。

一方で、前回で取り上げた採用に力を入れていない(と見られてしまう)企業の募集条件を見てみましょう。

1.決してあきらめない人材
2.問題を主体的に考え、解決する人材
3.自ら他者に関わり、人間関係作りができる人材
4.自ら新たなチャレンジができる人材

これでは、「WEBに全く興味のなく、経験もない文系」も「研究室に籠って教授と蜜月関係で研究に没頭した情報工学系学生」も母集団として応募して来てしまうのです。

その結果、本来会社に明らかに必要とされない要素を持っている学生へも採用リソースを割かなくてはいけなくなり、その分本当に欲しい学生へのアプローチが減ります。

では、リクルートさんと採用に力を入れていない(ように見えてしまう)企業とでは何処に差があるのでしょうか。
以下大きく3つの差があり、上から順に重要です。

実はこれが今回の主題の「似たり寄ったりの「求める人材像」になってしまう原因」なのです。

「自社の進むべき方向が明確」vs「自社の進むべき方向が曖昧」

一番顕著で重要な差は、自社がどういう方向に進むのかという方針が確りしているかです。

リクルートさんの求める人材像からは「当社は将来、WEBを駆使して情報を扱う企業になる!」という方向が明確に見えてきます。
事実、株式会社リクルートホールディングスのIR情報では明確に「ITを活用して実現」(「2015年3月期決算説明会」P28)と書かれていますし、ほぼ全てのサービスはITを活用したものです。

一方で「自社の進むべき方向が曖昧」な企業のWEBページでは「自社の進むべき方向が曖昧」です。
社名が特定される可能性があるのでリンクは貼りませんが、“「安心」「安全」をテーマに「選ばれる会社」を目指してお客様に提案していきます。”(※大意は変えず、一部内容を変更)とあります。*1

これを聞いて、「10年後、20年後、どのような企業に成るか?」を皆さん想像できるでしょうか?私にはわかりません(苦笑)

実は、そういう時には人事も自社が進むべき方向が分かっていない可能性が高いです。
もしくは進むべき方向を人事は認識しているがそれがコロコロ変わるので、具体的な事が言えない可能性もあります。*2

人事は「曖昧な募集要件をすればするほど、的外れな応募者が増えて、リソースが分散する」なんて事は百も承知です。
普通の人事であれば、出来ればリクルートさんのように明確な人材像を設定し、厳選した母集団の元で選考に掛けたいわけです。

しかし、現実には「会社の進む方向が全然分からない事(分かっていても酷く曖昧)」や「コロコロ方針が変わる経営者」がそれを阻みます。*3

「自社で活躍できる社員の特性が明確」vs「自社で活躍できる社員の特性が曖昧」

2つ目の差は、1つ目の「自社の進むべき方向が明確」があってのものですが、「自社でその時活躍するのはどういう人なのか」という人材要件が明確であるかどうかです。
人材要件が不明確であれば、当然「今、どういう人が欲しいか(=足らないか)」が分からないので、人材の募集要件も酷く曖昧なものになります。

リクルートさんの例で言うと、「中小企業向け業務支援分野」「教育産業」「ヘルスケア産業」とITを結びつけた事業に今後力を入れていきますよと書かれていますので

  • 中小企業・教育・ヘルスケアとはなんぞや?を知っている者
  • ITとはなんぞや?を知っている者
  • それらを効果的に結びつけ製品化する者
  • 結びつけた商品を宣伝できる者

等が(おおまかに)人材として必要となります。

その必要数に対して人事は「今、足りているのか」、足りていなければ「どのように人を充足していくのか」という「人事戦略」を考えていくわけです。
つまり、人事の仕事としては

  1. 「自社の進むべき方向」を咀嚼して、どんな人材が、いつ、どこで、何人必要か計算する
  2. そんな人材が今何人いるのか計算する
  3. 今居る人材で足りなければどのように人材を補充していくのか計算する
  4. 実際に補充していく

になります。

3の「どのように人材を補充していくのか」の方法の1つに採用が有るわけです。
つまり、理論的には1の計算があって3の採用が有るわけです。しかーし、実際にそこまで計算しての採用はなかなかできません。

人事職に就いている方ならば分かると思いますが、実務を熟しているわけではない人事職がどんな人材が現場で必要なのかを定義するのは非常に難しいのです。
私はITやメーカーに勤めていましたがプログラミング言語やカンバン方式の概要は分かったとしても、それを現場で適用できるような知識や経験は残念ながら持っていません。
知識や経験が無い中で採用することは、サッカーのルールブックをひと通り読み終えた位の知識レベルの人がA代表プレイヤーをJリーガーから選抜するようなものです。

なので、「求める人材像」を明確に定義するには現場の協力が必要ですが、現場は現場で仕事を抱えてますので採用に注力しすぎてはいけないし、これから仕事をつくろう!と全く未知の分野へ進出するのであればその現場もありません。

現実には「自社の進むべき方向」から「求める人材像」に降ろしていく作業は口で言うほど簡単ではありません。
なので、「自社の進むべき方向」と「求める人材像」は基本的に合致していません。

しかし、全然合致していない・ある程度は合致している、には大きな差が生まれてきます。
その差が「求める人材像」の明確さと説得力に関わってきます。

「自社のキャリアパスが明確」vs「自社のキャリアパスが曖昧」

人の補充手段として「採用」する事を選択し、「求める人材像」が決まったとしても、「中途」か「新卒」か「非正規」か「請負/派遣」かという採用手段の選択が待っています。

そこで重要になるのがキャリアパスです。
キャリアパスとは簡単に言えば「(入社から)いつまでに、誰が、何を、どこで、どれくらいの達成(価値の創造)をするのか」を定めたものです。
つまり「入社5年で、新卒大卒者は、売上20億円規模のIT新規プロジェクトを、茨城支店で達成する」というのがキャリアパスです。

このキャリアパスを基に「達成時点でどんな能力が必要か」「今どんな資質を持っていなければならないか」を明確にしていきます。
これは前項目の「人事戦略」と同様ですが、それを個人に焦点を当てて時系列的に考えたのがキャリアパスです。

つまり、「売上20億円規模のIT新規プロジェクトを茨城支店で達成する」為には

  • 茨城のニーズに精通した営業職が1人
  • その営業職を補佐するITに明るい事務職2人
  • IT業界に精通したSEが1人
  • WEB系言語でプログラムできるPGが2人

が必要だとして計算するのが、「人事戦略」です。

それに対して「IT業界に精通したSE」をどのように育て、充足していくのかを、採用から達成までレールを決めるのがキャリアパスです。
一定の区切りを付けて、「採用時にはこの知識が必要だよ」「1年目にはこの知識を習得しといてね」「2年目までにはこの経験をしといてね」と設定していきます。

ここまで明確でなくとも「5年で主任、10年で係長、15年で課長」とレールを決め、職責を基に達成目標や責任、権限や報酬を当てはめていく企業もあります。*4

さて、キャリアパスを「入社5年で、●●は、売上20億円規模のIT新規プロジェクトを、茨城支店で達成する」と設定をすると、「求める人材像」の「中途」「新卒」「非正規」「請負/派遣」という職位の選択と、教育の設定がなされます。

例のキャリアパスでは習得するべきスキル的に「非正規」や「派遣」では難しいと思うし、ちょっと「新卒」では荷がおもいかな?「中途」で採用しようかな?って話になります。
そして教育では、「新卒」を採用するのであればキャリアパスに沿った手厚い研修を施す必要がありますし、「中途」を採用するのであればキャリアパスに沿いつつも自主性に任せた金銭的補助位の教育でもいいかもしれません。

キャリアパスに則った採用を行った結果採用された社員は、道はもう出来ているのですから後はひたすら達成していくだけです。
達成できなければどうなるか分からないというプレッシャーも有りますが、目標が明確である分、自己啓発も効率的に取り組めますし、モチベーション管理も比較的楽になります。

「富士山へ登ろう!」と努めるのと、「見えた山に片っ端から登ろう!」と努めるのとでは結果が全然違います。

問題は、キャリアパスが全くない場合です。
つまり「私は、いつまでに、何を、どのように、何を使って、達成するのか」が全くない事を意味します。

最悪の場合「私は、退職するまで、上司の言われた仕事を、歯向かうこと無く、自力で達成する」というキャリアを踏むことにもなりかねません。
それでは「仕事で価値を生む」というよりも「上司の奴隷になる」というキャリアになってしまいます。
奴隷は上司が優秀であればある程度幸せかも知れませんが、上司の指示一つで人生がめちゃくちゃになる危険性をはらんでいます。

更にキャリアパス不在の場合、効果的な研修はほとんどなされません。
「裏山に登る!」ための研修は一朝一夕で身につくかもしれませんが、「富士山へ登る!」ための研修は長期間・多種多様のものが必要です。

当然長期間・多種多様な研修を設定する為にはある程度余裕を持った計画期間が必要です。
「富士山へ登る!」と前々から決まっている状態で研修を選ぶのならば、富士山へ登る人が皆受けていて評価が高い研修は何かをじっくり調べればいいかもしれませんが、「見えた山に片っ端から登ろう!」な状態では次の山が見えてからの研修探しが始まります。

これでは計画を練るのに時間や機会(この研修を受けたい!と思い立った時には既に研修が終わってる可能性があるという事)が足りず、行き当たりばったりな単発的な研修を繰り返すのみで、全く効果は上がりません。

もちろん、「見えた山に片っ端から登ろう!」な状態なので、どういう人材が必要になるかは次々と見える山がどんな山かによって短期間でコロコロ変わるので「求める人材像」を明確に示すことは出来ません。

従業員一人ひとりの「キャリアパス不在」も「求める人材像」の曖昧さの大きな原因です。

全ては企業の怠慢です

結局は「自社の進むべき方向を示す事」も「自社で活躍できる社員の特性の把握」も「キャリアパスの設定」も企業の責任において確りやるべきところです。
しかし、それをキッチリとやっている企業があまりにも少ないため「協調性のある人求む!」のような曖昧な求人要件が出てくるのです。

学生はな〜〜〜んにも悪くありません。

しかし、今までそれで回っていたのは 会社 >>> 学生 の立場であったからです。それが段々と 会社 < 学生 の立場へと向かっていけば状況は変わっていくでしょう。

事実、アパレル外食などのいわゆる不人気業界では都心では募集してもあまりにも採用出来ないため、アルバイト募集ですら明確なキャリアパスを示す所も増えてきています。
昔はコンビニアルバイト並みの「800円の時給です!」「週4日です!」「13:00〜17:00です!」しか情報開示しなかった企業も、採用難になればきっちりした募集をするようになるはずです。

従業員は家族でも、奴隷でも、ましてや使い捨ての道具でもありません。
労働法規によれば「雇用契約に基づいた対等な関係」です。

その事にきちんと気が付いて、理解を示している企業が増えれば「協調性ある人を求む!」という募集文言は減るでしょう。

*1:株式未公開企業か株式会社ではないのか、IR情報や会社情報はありませんでした

*2:「自社の進むべき方向が明確」でも、人事がヤル気がなければ「曖昧な人材像」になりますが、そんな人事が居る会社はダメでしょうw

*3:余談ですが、「求める人材像が明確であるか」は「きちんと進むべき方向を定めている企業か?」「コロコロ方針を替える経営者ではないか?」の確認する良い試験紙になります。面接の際には必ず「御社の10年後は?」と聞き、明確な回答があるかを確認すると良いです

*4:もちろん個人の成績によりレールは上下に外れます