優れた面接官として心がける事
わたしは中途採用面接官として、年間200名程の面接を行っているわけですが、逆に中途採用応募者としても100社位面接を受け、人事担当に会っているわけです。
採用市場において、需給者両面をかなりの深度で知っていますから、好印象を受ける面接官の態度とガッカリされる面接官の態度の違いが良くわかります。
私なりにその解釈をして今の面接に応用している結果、内定辞退率はほぼ10%、10人に1人内定辞退される位の数字をたたき出しています。もちろん所属会社のブランドとか待遇により内定辞退されないのもありますけど、「面接官の印象が悪かった」というフィードバックはここ2年ほどは1個もありません。
今回は面接官の取るべき態度などをお伝えできればと思います。
1.絶対に否定をしない
志望動機と退職理由を聞く時に「絶対に否定しない」というスタンスで臨むようにしています。
理由は簡単。自分が候補者の時、これをやられて最高に腹が立ったからです。
例えば、以下の退職理由を聞いたとして人によっては「甘いなぁ~」と考えるかもしれません。
どうでしょうか。 おそらくこれ以上の状況で働いている方もたくさんいるでしょうし、毎日2時間の残業=月40時間程の残業に耐えられないと公然とアピールされるような方を採用は出来ないという判断をされるのは仕方ありません。
しかし、その自分の判断を本人にアウトプットする事は極めて慎重に行ってください。 例えば以下のような問いをかぶせるのはNGです。
上記のような質問は質問する事によって、相手に「否定」というメッセージを与えます。つまり、相手には以下のように伝わっているという事です。
実際にはこのような事を思っていなかったとしても、相手にかなりネガティブな印象を与えます。もちろん、思っていたとしてもそれが相手に伝わっています。
ではなぜ「否定」を与えてはいけないのでしょうか。
1)面接評価は相手に伝える必要はない
面接の際に重要なのは、自社にとって候補者の考えが甘いかどうか・優れた人財かどうかを見る事であり、それを相手に伝える事ではないのです。
確かに、未熟な人に説教したり論破したりして、候補者を追い詰めるのは楽しい? かもしれませんが、その代償は大きなものになります。
甘いと感じてそれが当社に合う人材でないと判断できるなら、面接後に落とせば良いだけです。面接官が下手な質問をすることによって「お前は甘い」というメッセージを相手に伝えてしてしまって、相手に不快感を与える必要は全くありません。
2)間違いなく不快感を与えてしまう
この不快感、SNSで拡散されると非常に怖いですし、転職エージェント様と契約している企業はことさら気を遣ってください。
転職エージェント様での情報よりも、当然SNSで拡散される情報の方が信用が得やすいものとなります。 特に社員や求職者の立場から書かれた口コミ情報を信用する候補者はとても多く、OpenWork等に悪評を書かれると、かなり信憑性を以て根強く残ります。 候補者も「エージェントや人事は良い事しか言わない。だから、何とかあら捜しをしよう」というスタンスで見ていますので、そういった中立的な立場の人から発せられた悪評が1つでもあると、かなり不安に思うはずです。
また、転職エージェント様も客商売ですので候補者の転職モチベーションを下げるような要因は極限まで避けます。 その要因の一つが面接での悪評で、「あの企業の面接はひどい!」と候補者に言われてしまうと、次から気兼ねなく候補者を紹介できなくなります。これは転職エージェント様と契約をしている全人事職がしっかりと認識しておくべき重要項目です。 ※もちろん「あの企業の面接は素晴らしい!」と候補者に評判になれば、安心して紹介してもらえるようになります。
それゆえ、面接官たる者、相手に不快感を与えるような反応は限りなく0にする努力が必要です。
3)全肯定でも同じ質問が出来る
私は「甘いなぁ」と思う候補者に会ったとしても、以下のように深堀していきます。
相手が受ける印象が全く異なる事が見て取れると思います。
質問力を上げる事によってほとんど同じ効果が得られるのです。であれば、ストレートに表現をして相手に不快感を与えてしまう質問の仕方をするべきではありません。
4)候補者が本音を閉ざしてしまう
面接において大事なのはいかに候補者に本音(に近しい物)を語って頂けるかです。嘘で塗り固められた虚実で籠絡されてはいけません。 候補者が甘いのであれば、甘さを出してもらう必要があるのです。
候補者は本音で発した志望動機や退職理由を正論で論破されてしまうと、途端に萎縮して声が小さくなり、以降は本音を一切言わなくなります。こうなると、面接官からは候補者の良い物も悪い物も全く見えなくなります。ストレス耐性の強い者は逆に、正論で論破されても冷静な切り替えしが出来るので、高評価を受けがちになります。
ここで考えたいのは、ほとんどの社員は勤務中の95%の時間はリラックスして働いており、良い物も悪い物もオフィス内でさらけ出しているという事実です。高いストレスが掛かる状況というのは、平均して8時間の勤務時間中に1時間もいかないはずです。(逆に平社員が平均1時間以上も高ストレス状態が続く職場は良くない職場ですので、採用よりも職場改善が先でしょう) ですので、面接ではリラックス状況下でのパフォーマンスをまず見るべきで、ストレスが掛かり萎縮した状態でのパフォーマンスを診断するのは合理的ではありません。
体育会系学生に多いですが、高ストレス耐性の方は高ストレス下では活躍できますが、普段の95%の時間では部下や同僚に不要なストレスを与え、パワハラや周りへの配慮を欠いた言動を取ってチームに負の影響を与える事もあるという点も見ていくべきです。
ストレス耐性も大事ですが、協調的な考え方や慎重さ、責任感も同じレベルで大事なはずです。それは本音が否定されるような高ストレス状況下ではなかなか表に出てきません。それゆえ面接官には、候補者が「本音で語っても良い」という安心感がある場を作る義務があるのです。
ーーー
ちょっと長くなりましたのでいったん切ります。続きは順次追記していきたいと思います。
面接官必読!「勘違いさせる力」について
こちらを読了。一気に読めました。どうやらアマゾンなどでベストセラーになった程の著作だそうです。私的には、著者のblog「分裂勘違い君劇場」を10年くらい前から知っていて、そちらの方が詳しかったりしますけど(笑)
- 作者: ふろむだ
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2018/08/09
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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著者BLOG → 分裂勘違い君劇場 by ふろむだ
かなり示唆に富んでいたけれども、一言でこの本の主旨を伝えるなら「てめえの判断は絶対間違ってるぜ。でも皆間違ってんだからそれを利用してやれだぜ」です。
面接官は盲目状態で面接している
これ、面接官の私から言わしてもらうと、「グウッ」の音も出ません・・・。 面接官たるもの「私は正しく候補者の質を判断出来ている」などと自信満々な人は1%も居ないと思いますが、なぜ自信が持てないのか、理論的によくわかります。
また、「面接の60分の間で、私の何が分かるの??」と憤る候補者はたくさんいると思いますが、その通りです。面接官は開始30秒足らずの印象に引きずられて、過去の面接経験に引きずられて、一部のエピソードに引きずられて、候補者の事が全く分からないような盲目状態で面接をしているようです。それが明確に分かりました。
無意識に書き換えられる事実
彼らの「意識」は、たしかに、容姿ではなく、政治手腕・人柄・政策を見て、投票したのだ。 しかし、まるで夢遊病者のように、彼らの「無意識」が、彼らの意識が知らないところで、政治手腕・人柄・政策の評価値を書きかえてしまっていたのだ
恐ろしいのは、上記のように無意識に自己判断がゆがめられてしまうという事実です。
訓練された面接官はその人の素養やスキルを事実ベースで的確に聞き出してきます。それは間違いありません。
その点で、候補者は幾ら事実を隠そうとしても無駄です。訓練された面接官には素晴らしい嗅覚が備わってますので、臭い部分を探り当て、的確に事実を見破ってきます。
しかし本書によると、その聞き出した事実に対して、解釈が無意識にゆがめられてしまうのです。これは由々しき事態ですね。。。
例えば「営業成績No.1」「周囲の評価も高く、部下に推薦される形で課長になった」という事実を聞き出したとしても
- 服装が悪印象 → 営業成績No.1はその人の功績ではないはずだ
- 服装が好印象 → 営業成績No.1は当然だ
と考えてしまうのです。しかも無意識に。本来、服装の良し悪し(=自分の好みの服装かどうか)と営業成績には関連はありません。しかし、自分が好みの服装かどうかという点での判断が、全く違う事実に対する解釈に影響してしまうのです。
これを著書では「思考の錯覚」と解説しています。
一つでも良い部分があれば、高評価に引っ張られる
たとえば、 「売り上げを半期で73%増やしました」 「DAU500万人のアプリのサーバを運用していました」 「株式会社凸凹商事の営業部長をやっていました」 「月間300万PVのブロガーです」 「あの有名人のベストセラー本を担当した編集者です」
なんていうわかりやすい実績は、どれも「思考の錯覚」を作り出す。 たとえそれが実力によるものではなく、上司や同僚や部下や顧客のおかげで達成できた実績だったとしても、強烈な思考の錯覚を生み出すのだ。
ああ、何て怖い事でしょう。一つでも良い印象を持つ要素があれば、その他に対する印象を引き上げてしまうという事ですね。
面接で言えば、候補者に「東大卒」という学歴があれば、本当は全然仕事ができない人であったとしても、そして仮に候補者自身が「全然仕事ができませんでした」とアピールしたとしても、面接官が無意識に「仕事が出来ない」という事実をゆがめてしまい、「本当は仕事が出来る奴だ。何かあったはずだ。そうだ!上司との人間関係が問題だったのだ!」とか都合よく解釈をしてくる事を意味してます。
そして面接の態度は「本当は仕事ができるという根拠はどこだろうか」になってしまい、公平に事実から判断するべき面接官の目を曇らせてきます。
しかし、本書にてこういう原理原則を知ったとしても、対策のしようがないところも頭が痛い部分です。
面接官必読
「人をジャッジするのは難しい」と頭を抱える面接官は多いと思いますが、そもそも曇りなき公正なジャッジ自体が無理ゲーという事が、本書を読んでいると良く分かります。人間の脳構造的に不可能であるならば、不可能であるという事実を受け入れて「俺のジャッジは必ず歪んでいる」というマインドセットを基に面接を進めた方が幾分健康的です。
もちろん、逆に候補者側である場合、「思考の錯覚」を逆手にとって、面接官を篭絡する道しるべにもなります。その意味でも、面接対策としても十分で、とても怖い書であると思います。
- 作者: ふろむだ
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1週間に1日位、仕事をサボろう
仕事の6割は無駄な事をしていると信じて疑わない鬼クマです。
先日、家族の危篤を知らせる報があり、1日休みました。また、その前の週は風邪でも1日休んでしまいました。
1週間で1日、2週間連続で急に休んでしまったのですが、不思議と仕事は上手く行きました。確かにその他の4日間の仕事の密度は高まってしまうものの、「何とかこなせる量」であり、むしろ4日間は集中力が増していたように感じます。生産性がアップしていますね。
ここで思いました。
あれ? 週4日勤務で良いんじゃない? と
1週間に1日サボっても大丈夫なんじゃないの? と
今回は「仕事をサボる」事について語ります。
今日やる必要のある仕事って何?
ちなみに月曜を休んだ今週を例にとると、火曜日の朝には、先週金曜夜~月曜までのメールが120件くらい溜まっています(!)私宛のメールではないものが含まれているものの、80件くらいは私宛のメールです。
でも、80件のメールは火曜日に対処しても全然間に合うし、むしろ「月曜じゃないと間に合わなかった! アチャー!」というメールはありませんでした。
ここでも思いましたね。
あれ? 今日中にやらなきゃいけない仕事って、実はあんまりないんじゃない?? と
鬼クマさんは人事ですから、さすがに「面接」はその日に行わなければいけませんね。あとは客先訪問などはその日に行わなければいけません。講演会でのスピーチなどは、ずらすのは難しいでしょう。
けれど、それ以外の予定なんかは全然ドタキャンでOKでした。むしろ、私が居なかった方がスムーズに行った部分もあるのでは? と勘ぐってしまう程です。
よくありますよね、「人事部は全員出席」という建前だから会議に呼ぶけれど、別に呼びたくなし、呼んでも意味のない人。あれって、かなりの会議に含まれているんじゃないかなと思うんですよ。
私も意見は言いますけど、部門長や取締役が「NO!」と言えば基本的には従います。だから、会議には居なくてもあまり問題になりません。本当に会議に必要な人員って、20%位だと思いますよ。他の80%は「20%の意向を汲んで発言するサラリーマン」なわけですから、20%の人に意志決定させて、80%には伝えれば良いんじゃない?と思います。
という訳で、ほとんど今日中にやるべき仕事が見つからなかったのですが、「今日やった方が良い(なるべく早めにやった方が良い)仕事」はたくさん見つかりました。
仕事って納期が大事と言われますけれど、どうやら私の仕事には明確な納期が付いていない物が多く、幸せな環境で仕事ができているんでしょうか。逆に「自分で納期を空気を読んで設定しないといけない」という難しさがある分、明確な納期が設定されている方が難しいとも言えますが。。。他のビジネスマンはどうでしょうかね。知りたいです。
学校をサボってよかった
今日やらなくても良い(けどやった方が良い)仕事に大半が押されている状況だと、私はついつい先延ばしにしてしまう傾向があります。
なぜかな?と思ったのですが、これは夏休みの宿題を小学校から高校まで一度もまともに提出してこなかったという私の経歴にあるような気がします。つまり、学校をサボってたのですね。まともに宿題はやりませんでした。
宿題だけではありません。遅刻も1年で70回は超えていました(1カ月で10回!)し、欠席も1年で20日はしてました。もちろん、サボりです。
そういったパーソナリティが「会社を有給休暇で1日休んでも大丈夫!!」に繋がっているのかと思うと、学校教育も大事だなぁーと思います。きっと無遅刻無欠席で皆勤賞みたいな人だと、転職も怖いだろうし、体調不良で会社を休むのも怖いだろうから有給休暇も使えないんでしょう。
ちなみにサボりの常習者は責任感が無さとイコールで結びつきません。私自身サボりまくりましたが、大学を卒業し、懲戒もなく上場企業の人事部におさまっていたりします。
無連絡で欠勤や早退するのはさすがに学校でも会社でも一度もありません。また、入社式など休めない仕事がある時は、熱が40度出ようが出勤します。つまり、サボれる時を巧妙に見計らって、きちんと連絡をして、仮病を使って、親戚を病気にして、堂々と(!)サボるわけです。
何て言うんでしょう、サボり方が上手いのです(笑)普段から相手を殴り慣れている不良は、不注意で相手に重傷を負わせて警察に逮捕される事は少ないというアレです。線引きが非常にうまいのです。だから、周りの評価は「良く休む奴だな」とは思われても、「無責任で社会人失格だな」とまでは思われません。多分(笑)
私はそういうメンタリティの持ち主でございますので、期限の決まっていない仕事はどんどんサボってしまうのですが、不思議な事は「サボっても大丈夫じゃね?!」と思える仕事が思いのほか多い事です。
新入社員研修では「仕事は命がけ!全部大切!」みたいな事を言われますが、実際は全然そんなことは無くて、実にはっきりした濃淡が付いています。自称サボり魔の鬼クマさんは、その濃淡を的確に嗅ぎ分けて、的確にサボるわけですね(笑)
学校で学べることはいっぱいありますし、今でも社会性の基礎などは十二分に役に立っていますが、「やらなきゃいけないと思っている事をサボっても、意外と大丈夫!」を学べたことは大きかったと思います。でないと、「全部を完璧に仕上げようとして、残業しまくって疲弊して、部下にもそれを押し付ける」という最悪な上司になっていた事でしょう。
早めに「サボっても大した事ねぇよ!」という経験をさせてくれた学校と、自分自身の怠惰さに感謝ですね。
ちょっとサボろうよ?
話がだいぶ逸れましたが、言いたい事は「私たちが絶対しなくちゃならない仕事」って意外とサボれるという事実です。まるで学校で欠席や遅刻をメチャクチャ恐れる学生のように、会社員は仕事に対してサボるという事を異常に恐れている気がしてなりません。
学生時代のサボりなんてものは、10年後の社会人にとってみれば全然大した事ありません。しかし学生だった自分にしてみれば、学校をサボるという事は非常に勇気のいる行動でした。何であんなに恐れていたのでしょうか。とても不思議です。
そして、それは恐らく、10年後の社会人たる自分にとってみれば、今の自分が「絶対にやらなくちゃ!」と思っている仕事も大した事ない可能性が十分にあります。
今の自分が今の仕事を放り出してサボるというのは非常に難しく勇気のいる行動だと思いますが、最後に勇気づけられるエピソードをお伝えします。
私は複数社経験していますが、常に人事データを扱える部署に配属をされていたため、いろいろな部署のデータを見る事が出来ます。その中には「出退勤データ」も見る事が出来るのですが、びっくりしたのは、ある会社のある部署のデータです。
なんと、30%しか無遅刻無欠勤でなかったのです。7割超の人間は遅刻分は残業相殺をし、欠勤分は休日出勤で賄っていました。つまり、毎月の勤怠データを書き換えて「無遅刻無欠勤」になるように帳尻合わせをしていたんですね。修正前のそのデータの酷さと言ったらありませんでした。
「えっ?そんなの例外でしょ?!」と思うかもしれませんが、感覚値ですが、10人いれば1~2人は無遅刻無欠勤ではありません。有給休暇や残業時間で調整をする帳尻合わせ君は少なくない数で存在しています。取締役や管理職に限ると、5人に1人は遅刻や欠勤をしています(そもそも出勤時間に縛られないですが)。
つまり、「社会人は無遅刻無欠勤が当たり前!」という枠組みで動いていない組織が上場企業や大企業にもあり、しかもきちんと利益を上げているのです。
「無遅刻無欠勤が当たり前!」「すべての仕事に全力投球!」「細部に神が宿る!(かつ、全部の仕事に神を宿らせる!)」などと固く信じて仕事をすると自分も周りも疲弊したりします。そんな時はちょっとサボる事を考えませんか??
サボれ!とは言いませんが、サボっても大したことないんじゃ?? と常に思い続けていくメンタリティは、自分の為にも身に着けておいて損はないと思います。
そうして仕事をサボりまくった結果、業務改善や残業0に通じる筋道が立てられるのです。そのことについてはまた今度。
「仕事はクソ」から始めるべき
私は「仕事が楽しい!」「お金を払ってでも仕事をしたい!」という思想や意見が大変苦手で、嫌悪感すら覚えます。そう言う人とはあんまり付き合いたくないです。
はっきり言って、こんな事を言える人が居るなんて理解できません。
一時期冷静に「仕事は楽しいのか」と考えて分析したことがあるのですが、どうしても仕事が本質的に楽しいものと結論付けられなかったのです。
以下は私が冷静に考えた内容を記しますが、これらに賛同いただき、日本がより良い労働環境を備える国となるように密かに祈っていたりします。
仕事が楽しいという幻想
私は誰かが「仕事が楽しい」と言っていたとすると、それははっきり言って嘘だと思います。なぜなら、楽しい事は声高に楽しいとは言わないからです。
私の感じる気持ち悪さはここにあります。
例えばテレビゲームに熱中している時にことさら「ゲーム楽しい!」って人に言わないでしょう。 また、テレビに出る一流のタレントやアスリートが「芸能人ってメチャ楽しい!」「サッカー死ぬほど楽しい!」って言ってますか?
私は全く聞いたことありませんが。逆に「つらい」とか「厳しい」という意見ならいっぱい聞いたことあります。
だけれども、一部の人は臆面もなく「営業って楽しい!」っていうんですよ。
なぜ?? なぜその楽しさを発見できたの?
一流のタレントや一流アスリートでさえ感じられない「仕事の面白さ」が、一般的な営業担当に感じられるのはなぜ??
また、「営業楽しい!」って言う人に聞いてみたいのですが、無報酬で誰からも注目されなくても、それをやりますか?
「会社が倒産しそうで3ヶ月は給料0。オフィスも解約するから自宅で仕事してくれ。社員は君以外は解雇するから仕事は一人でやって」と言われて、今の仕事を続ける人はどれ位いるのでしょうか。
そう言われてモチベーションがダウンするのであれば、仕事が楽しかったのではなく
が楽しかったのではないか?と疑わざるを得ません。
であれば、別に「仕事が楽しい!」のではなく
では?? それだと純粋に「仕事が楽しい」か分からないわけですよね。
そして仮にそういった仕事以外の面が楽しかったのであれば、当然私のような下っ端(てか経営者以外)には共感されません。 下っ端は報酬が搾取され、誰からも注目されないのですから。 いっぱい報酬がもらえて注目される上役から「仕事へやる気出せ!」と言われたところで、仕事へのモチベーションなど上がりようもありません。
事実が象徴するように「仕事は楽しい」はたいていトップダウンで出てきます。下っ端からはほとんど出てきません。その意味でも、「仕事が楽しい!」のではなく、出世して人・物・金を動かす裁量などが楽しいのであり、仕事それ自体が楽しいかどうかは疑問なんじゃないですか。
つまり、パティシエという仕事が楽しいのではなく、パティシエの「チーフ」が楽しいのであり、別にエンジニアの「チーフ」でも、営業の「チーフ」でも、楽しい可能性が高いと思うのです。それって、仕事が楽しいとは違いますよね??
仕事が楽しい!と安易に言っちゃう人は、ここを認識しておく必要があると思います。
「仕事は楽しい」から発想した改革vs「仕事は絶対クソ」から発想した改革
私が大好きな外国人の発想に、「仕事は絶対クソ」というものがあります。「絶対」というのは、いかなる状況でもクソだということです。職場環境や労働契約は全てそこから出発しているように思えます。
一方で、日本だけが「仕事は美徳」という思想があるように思います。つまり、仕事は本来素晴らしいものであり、「仕事は美徳」が目指すべき態度であり、そうなっていないとすればそれは自分(あるいは社会??)の責任において正さないといけない、みたいな思想です。
これ、本当にダメな思想だと思いますよ。
なぜなら、「仕事は本来楽しい」「仕事は美徳」(=なるべくした方がいい)という発想から改革をすると悲惨になるからです。
ね? 改革しようにも逆方向のベクトルが「非論理的に」ついてしまい、歯止めがかかるわけです。一方で「仕事は絶対クソ」(=なるべくしないほうがいい)という発想から改革するとまるで異なります。
全然結果が違ってきますね。
でも、「仕事は美徳」の思想の方が利益が上がるでしょう?!と思うかもしれません。しかし、日本の労働者一人当たりの利益は諸外国に大して差がありません。逆に「仕事はクソ」と(少なくとも日本よりはそう)思っているドイツ・フランス・オーストラリアの方が一人当たりの利益が高いのです。
そして、日本の労働時間はここ40年でどんどん減っていますが、利益は減っていません。労働観も「24時間働けますか」から「ワークライフバランス」へと「働かない方向」にシフトしていますが、利益は減っていないのです。
つまり、「仕事はクソ」と思っていようが、仕事は美徳だと思っていようが、それだけでは国の豊かさはほとんど変わりませんよ。という事です。豊かさが変わらないのだったら、「仕事はクソ」と思った方が良いのでは?と思います。
「仕事はクソ」から出発すべき
よくある誤解が、ドイツ・フランス・オーストラリア人が怠け者であるというものです。はっきり言いますが、彼らは長くは働きませんが、良く働きます。
日本人は良く働くといいますが、私は「どうなんでしょ?!」と思います。
たしかに「良く働く = 思考停止して長時間働く事」と定義すれば日本人は良く働くのでしょう。 だけど、「良く働く = 利益を上げるために最小かつ最短で働く」と定義すると、日本は「良く働く」どころか逆にきわめて怠けものだと思います。
それが端的に表れるのが会議です。
会議は基本的に何かを決めるたり情報を伝達するためにあります。なので決めたり考えたりした結論が同じなら、会議時間が短ければ短いほど、人は少なければ少ないほど良いです。
ところが日本では逆に、明確な議題が無いのに定例会議が開かれ、そこに考えられうる最大数の社員を投入したりします。ある意味、会議時間は長ければ長いほどよく、人は多ければ多いほど良いの発想です。
外国では「仕事はクソ」という思想ですから、もちろん会議もクソになります。つまり、一刻も早くクソ会議を終えよう!という合意が全員でなされているわけです。
そこでは少しでも非生産的な意見を言ったり主旨と関係のない持論を展開したりすると、メンバー全員がクソを掴む時間が延びる訳です。当然、後ほど激しく叱責されるでしょう。
つまり、会議というクソをなるべく避けたいという欲求が、会議を最小かつ最短で終えるという行動に結びつき、業務改善・生産性の向上に繋がっているのです。
一方で、仕事は美徳であるという思想では、もちろん会議の時間も美徳であるので、会議時間自体を減らしたり、回数を削減するという動機が生まれにくいです。
例えば、とある日系企業で上司数名が大演説を繰り広げ、部下多数が御高説を拝聴する、みたいな営業会議が開かれるとしましょう。
そこで一人の部下が「上司数名の発言はPDFで配布して、部下多数はそれに対する意見をメールで提出で良いのでは?」「だから、こういった定例営業会議は無駄なのでやめましょうよ」なんて言ったらどうなるか。 10人中9人がそう思っていたとしても確実に干されます。それは出席者全員に「会議は美徳!仕事は美徳!」という意識があるからです。
「仕事はクソ」という意識がサービス残業を撲滅する
あなたはいくらもらえばクソを手づかみしますか?
あなたは報酬を渡すと約束してクソを手づかみさせた後、その約束を反故にして平気でいられますか?
私たちの中で、無料でクソを掴む人は居ません。また、クソを掴ませておきながら平気な人もいません。ひどく苦痛を味わうものだから、クソを掴むという行動にはそれなりの代償を用意することになるのです。
本来労働とは「クソを掴むようなもの」として広く認識した方が健康的だと思います。労働とは労働者にクソを掴ませる事に等しいという認識が日本全体にあれば、賃金支払いという、約束を反故にしてのうのうと経営している経営者は皆無になるはずです。
ここを「仕事で成長!」とか「仕事は美徳!」とか「仕事をしてこそ一人前!」みたいなプラスイメージで固めてしまうと、賃金支払いを逃れている経営者や、それを取り締まるべき国の心が痛まなくなってしまいます。
また、労働者自身も「成長するために賃金もらえなくても我慢しよう!」と我慢してしまいます。そして経営者でもないのに「始業前・終業後に営業会議だ!」と言う自称管理職(通称労働者)がかなり居たりしますが、彼らには「仕事はクソ」という意識はありません。
しかし「仕事はクソ」だと考えている外国人や私のような一部の労働者にとって「仕事はクソ」なのであり、クソを掴むことが労働であり、その報酬が「成長」では、とてもではないですが我慢できないのです。
日本全国民が本当に労働を嫌い、「クソを掴むか、会社に行くか…。う~~~ん迷う!」位になれば、賃金不払いも今よりは改善するはずです。
日本がそろそろそういう社会に舵を切っていく事を切に願っています。
働き方改革では生産性を考えてはいけない
働き方改革を議論しているときに「生産性の向上の観点から、テレワークには懐疑的」という意見がありました。
働き方改革先進国アメリカでは生産性の向上が測れないからすでにテレワーク導入は見送られ、「オフィスに出勤」へと回帰しているとかなんとか。
私は働き方改革は生産性の向上の為に導入を検討すると必ず足踏みして失敗すると思う。なぜなら、働き方改革は生産性の向上の為のモノではないからだ。
働き方改革は生産性で測ると失敗する
政府の言うように、働き方改革の表向きの意図は生産性の向上と言われていて、働き方改革は政府の最重要課題と位置付けられています。
6月にも「働き方改革関連法」が成立し、ますます働き方改革の文字が躍っています。それに付随して、テレワークやサテライトオフィス、テレビ会議などのリモートワーク関連の情報、裁量労働制の拡大や同一労働同一賃金など人事制度の情報があふれています。そして、それらの実効性をうたう際には必ず「生産性」を持ち出して来ています。
生産性の概念を詳しくは説明しませんが、簡単に言うと「いかに短く、濃く働くか」という事です。それ自体は経営者として目指すべき物で間違いはありません。
問題なのは、働き方改革 = 生産性向上施策という固まった考え方 です。
なぜなら、顔を突き合わせて、議論する方が生産性が高いに決まってるからです。確かにテレワークも便利ではありますが、フェイストゥフェイスの密度には敵いません。
例えばテレビ会議と顔を突き合わせての会議を比較します。
テレビ会議は空気感が読めなくなりますし、多人数が同時に発言できずに「妙な間」が頻出します。カメラ越しに相手の顔しか見えませんから、身体全体から発せられるメタメッセージも拾えません。テレビ会議ではコミュニケーション深度は浅くなりがちです。
会議をやる1時間だけ切り取ると、テレワークよりも顔を突き合わせて会議をやる方がはるかに生産性は高いです。
これはオフィスと在宅勤務も一緒です。「働く」に最適化されたオフィスと、「生活」に最適化された自宅とで比較した場合に、前者の方が効率的である事が多いです。
つまり、移動しなければならないという部分を除き、単純に行為そのものの生産性だけを考えると、オフィスに毎日出勤して会議に出席するというスタイルは実に生産性が高いと言えます。
つまり、テレワークをやったら会議や仕事の内容が遥かに向上し、全員の生産性が著しく上がりました!というのは現状かなりハードルが高いと言えます。
ちなみに、会議で何も決まらない企業はテレワークを導入しても何も決まらないです。運転技術がへたくそな人はどんな車を運転しても事故を起こします。
しかし、それでも働き方改革は本気で導入しなくてはならないと考えています。当然、生産性低下は避けられませんし、利益も減るかもしれません。しかし、導入せざるを得ない状況が間もなくやってくるのです。
導入せざるを得ない状況とは何でしょうか?
それは、導入できなければ優秀な人材がどんどん流出する時代になる、という事です。その状況にあっては、働き方改革を導入する際に留意するべきポイントは「生産性をどう高めるか?」ではなく「いかに生産性を減らさずに導入できるか?」が焦点になって来るはずです。
もはや、働き方改革を導入するかしないか、ではなく、導入することを前提として、いかに折り合いをつけていくかという話になります。例えば今は育児休暇を設定するか否かを「生産性の観点」から論じる段階にはないはずです。育児休暇は設定するものとして考えて、ではどのように設定すれば利益現象が最小限(もしくは少しでもプラス)になるかを検討するというものです。それと一緒の状況が訪れるわけです。
働き方改革は人材引き留めのボトルネック解消側面が強い
ではなぜ、導入せざるを得ない状況になると言い切れるのでしょうか。それは30~40代の男女労働者に今後降りかかる「3K」問題があるからです。3Kとは私の命名で「介護、子育て、家事」の頭文字をとっています。
「3K」によって、働き盛りの30〜40代の男女労働者が大量に離職してしまう。しかも、労働者は3K以外には職場にとても満足しており、職場環境もとてもブラックとは言えない。そんな状況が訪れる事を「3K」問題も言います。
これ、今はまだ建設など一部の業種にしか人事問題としてクローズアップされていませんが、早晩、大きな人事上の問題として取り上げられる事は確実です。なぜなら、女性や高齢者の社会進出に伴い、専業主婦や親という3Kの分業担い手が不足してきている状況、かつ、単純にその層の労働者が減るため、ますます進行していくからです。
確かにルンバや食洗器が高度化すれば、家事の解消は出来るかもしれませんが、介護は解消不可能でしょう。高齢者の介護は「下手したら死ぬ」という状況ですから、介護ロボットが出来たとしても、100%安全に確実に危篤状況が判断できる、という完璧なものでも出来ない限り、普及には至らないはずです。 仮にそんな高度な判断が出来る介護ロボットが出来るのであれば、もはや人が労働しているかも疑問なきわめて進んだ世の中になっており、そんな時代が直ぐに日本に登場するとは思えないのです。
まして、子育てロボットが出来たとしても、子育てのすべてをロボットに担ってもらう事はないはずです。やっぱり自分の子どもの成長は間近で見たい。子育ては大変ですが、そのすべてを肩代わりしてもらう事を人は望みません。
このように、女性や高齢者の社会進出ととともに、今まで彼らに押し付けてきた3Kが30~40代の夫に降りかかって来るのは避けられません。
更に、いくら高給でも「家族を犠牲にできない」という価値観が離職に拍車を掛けます。1世帯当たりの構成員の減少により、親族は減少の一途です。親族が減るという事は、一人一人の重みが増えるという事で、ますます「我が子はかわいい」になるわけです。
他方、今まで運命共同体で「家族」でもあった会社では、終身雇用と年功序列が薄れ、解雇されないまでも一生飼い殺しにされる先輩を量産するなど、会社の冷たい本音が露わになっています。会社に対して一生尽くすつもりで頑張っても、過去と比べて相対的にリスクが高まり、リターンが減っているのです。
つまり、「会社よりも親族に重きを置く」という欧米では当然の価値観が、今後の主流になってもなんらおかしくはない状況が産まれつつあります。
「労働者が減る問題は移民を受け入れれば大丈夫」という意見もあります。確かに移民を積極的に受け入れれば単純労働者は増えます。しかし、欲しいのは、10~20年前線で働いて、確かな経験と知見をもった30~40代の労働者なのです。
移民を大量に受け入れれば、勤続1年以内でも立派に働けるような飲食や小売、清掃業に低スキル者が溢れるかもしれませんが、勤続10年以上を要するようなベテランエンジニアなどは補充することはそうそう出来ないはずです。
なぜなら、それほどのスキルを持っているのであれば母国に帰るか、アメリカやインドに行き、よほど高い給与で働くからです。
日本人で30~40代の男性が担うようなベテランからエース級の働きを外国人に要求するには、日本は社内公用語の英語化や税法などのソフト面から、通勤電車や居住などのハード面まで整備し、インド・シンガポール・香港・アメリカと闘わなければなりません。
働き方改革はスタートアップが特に有効
この待ったなしの働き方改革ですが、これはスタートアップベンチャーにとってはかなりの追い風になるはずです。
これからは世帯収入=夫の稼ぎという図式が崩れ、世帯収入=妻の収入+夫の収入(+親の年金)という図式になり、世帯収入の最大化を考えたときに、必ずしも夫の収入の優先度は高くなりません。
つまり、夫の収入が1,000万円でなくても、夫が500万円、妻も500万円稼いで、両親が100万円ずつの年金を入れればトータルで1,200万円の世帯年収じゃん!という考え方が広がるのです。それは「稼げる男性が減少」した一方で「稼げる女性が増加」した事による当然の帰結です。
昔は世帯年収で1,000万円稼ぐためには、夫が16時間休みなく毎日働くしかなかったわけですが、今は共働きで7時間ずつ500万円働くという選択肢も十分にあります。昔はそれしか方法が無かったので、会社の会議に出席するために泣く泣く我が子の卒業式を欠席する夫と残念に思う妻も多かったと思うのですが、今は共働きであれば十分に1,000万円級の裕福な生活が出来ます。それゆえ、例え各々が高い給与を得られるハイスキル夫婦でも「年収500万円でも我が子の卒業式には参加できる企業」に敢えて就職して世帯年収1,000万円で暮らしたとしても何ら不思議ではありません。
実際、我が子と一緒に、無理なく毎日夕飯が食べられます!という状況を100万円出しても欲しい夫婦は多数いるはずです。であれば、ある企業において、同業他社より100万円給与水準が低いとしても、毎日確実に我が子と朝食や夕食を共に出来るというオファーが出せれば共働き世帯に十分訴求できるわけです。
また、働き方改革に限る話ではないのですが、改革は多人数への根回しや政治力が比較的不要な少人数の組織に有利です。逆に根回しを周到にすることが求められる大きな組織にはとても不利です。
働き方改革のような新しい働き方を導入すると、一時的に生産性が大きく下がります。慣れないITを駆使しないといけない、今までのルールが通用しなくなる(PCの持ち出しが禁止されるなど)、自分の頭の中でやっていた仕事を明文化しないといけなくなる、といった制限が出てきます。こういった生産性の低下要因は高齢社員ほど大きな悪影響になるため、彼らが真っ先に抵抗勢力となり導入は進まない事が多いです。
また、高齢社員はあと数年間無事に勤め上げる事が至上命題であり、10年後を見据えて今の生産性を大きく落としてリスクを取りましょう!と言ったところで、受け入れる可能性はほぼありません。
一方で全員が30代の小規模組織であれば10年後を見据えた改革もすんなり受け入れられるでしょう。10年後でも40代で、まだ20年は勤めなくてはなりませんから。全員が若い30代で組織されているというのはスタートアップの典型例ですね。
しかし、いくらスタートアップが働き方改革で有利だとしても、気を付けなくてはならないのは、旧態然とした長時間労働や転勤の強制は確実に解消しなくてはならないという事です。
大手よりも年収や経験の幅が少ない以上、大手が12時間労働で1千万円を提示するのに対して、同じ12時間800万円では労働者にとって就職する意味が無いです。3Kを抱えた労働者を狙い撃ちにするわけですから、介護や子育て、家事が無理なく出来るような圧倒的なインセンティブが必要です。そして、現状では介護や子育てに必要なのは時間と勤務地の自由です。
つまり、フレキシブルな労働時間(×だからと言って長時間は禁止)と勤務地を保証すれば、たとえ大企業で1,000万円はもらうであろうハイスペック人材も800万円程で採れる可能性があることを意味しています。
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私も30代後半を迎え、親の介護を本気で心配しなければなりません。そんな時に「長時間労働で全国転勤と長期出張よろしく!」と言われると、例えやりがいある仕事で給与が高いとしても非常に困ります。
それでもなお大企業が「長時間労働と休日出勤、全国転勤と長期出張よろしく!」と労働者に強いるのであれば、そういった困った労働者を狙い撃ちにするスタートアップ企業に人材がどんどん移動してしまい、日本全体の生産性が下がりかねません。
働き方改革は一過性のブームでは終わりません。大企業の人事こそ、真剣に考えて取り組まなければなりません。
「どうすればいいですか?」はあなたの年収を下げる魔法のことば
転職経験3回、10年以上人事をやっていると、いろいろな人を見てきます。
新卒で採用されて、順調に主任に上がるもの、上がらないもの。
中途で採用されるも頭角を現さずにどんどん埋もれていくもの。期待通りの成績を残すもの。
派遣社員で活躍し、正社員を凌駕する実力を備えつつも、制度の壁は越えられずに苦悶するもの。辞めるもの。
本当にいろいろな人を見てきましたが、「出来ない人」の特徴には一つの共通点がある事を数年前に発見しましたのでお伝えします。
これは中途新卒関係ありません。年齢も関係ありません。役職は・・・関係あります。
「どうすればいいですか?」を平気で聞く
これです。この言葉を上司や同僚にすぐ投げかける人で出世している人や、いわゆる「デキる」人を見たことがありません。
仕事は大まかに2種類に分かれます。一つは定型業務、もう一つは非定形業務です。
そしてほぼ例外なく以下の関係性が成り立ちます。
- 定型業務・・・答えが分かる。低賃金。ミドルリスク・超低リターン。誰がやっても成果の質は同じ。量は異なる
- 非定型業務・・・答えは分からない。高賃金。ハイリスク・超高リターン。人によって成果の質・量ともにものすごく異なる。
さて、冒頭の「どうすればいいですか?」は定型業務に対する答えを聞いている状況です。つまり、「どうすればいいですか?」と聞いて答えが返ってくるとしたら、その人は定型業務しかやっていない証拠です。
ずっと仕事を続けていると、早晩、低賃金にあえぐことになるか、または転職できずに今の職場にしがみつくことになります。これは100%間違いありません。いっぱいいろんな人を見てきた中で、そして自ら転職市場に身をさらす中で実感してきた体験知です。
たとえば「人を笑わせる業務」という仕事を請け負ったとします。そこで「どうすればいいですか?」と上司や同僚に聞いたとしましょう。
そこでAさんは「お笑い芸人を呼んで。予算は120万円くらいだから、経理に決済もらっておいて。」と先輩から優しく指示を受ける環境で過ごしたとします。一方でBさんは「そんなの分かんねぇから、自分で考えてやってくれ」と先輩から厳しく放置される環境で過ごしたとします。
- Aさん・・・何をすればいいか指示をくれる環境に身を置く
- Bさん・・・何をすればいいか自分で考えないといけない環境に身を置く
Aさんは「お笑い芸人を呼ぶ」「経理に決済をもらう」という仕事をします。もちろん、笑わすことが出来ないという失敗をしてしまう事はAさんには訪れるでしょう。しかし、Aさんの失敗は先輩の責任になります。
Bさんは「相手をくすぐる」という暴挙をします。もちろん、確実に失敗してしまいますからBさんは激しく怒られます。そうしてBさんは自分の考えがとても幼稚であると自覚、反省し、勉強し、考え方を鍛えていきます。
さて、両者が3年経つとどのような人材になっているでしょうか。
- Aさん・・・どのような仕事をすべきか考えられないが、指示された業務を的確にこなす社員になる
- Bさん・・・指示された業務は的確にこなせないが、どのような仕事をするべきか考えられる社員になる
さて、会社に依頼する仕事の大本をたどれば、そのほとんどが非定型業務です。
- 人を笑わせる
- 売上をあげる
- 痛みを取り除く
- 美味しいものを提供する
これらは「これをすれば100%完璧!」な答えなど存在しません。全国民をいかなる状況でも笑わせられるコメディアンなんていませんし、どんな痛みも取り除く万能鎮痛剤もありません。
よって、仕事を引き受ける場合には「まずは何をやるべきか?!(やらないべきか?!)」を考える必要があり、その答えがないからこそ人によってそのアウトプットが大きく左右されるものであり、その報酬も青天井が付くものになります。
しかし、「人を笑わせる業務」という非定型業務を引き受けたとしても、先輩がそれを「お笑い芸人を呼ぶ」と「経理に決済をもらう」という仕事に分解してしまい、それを定型業務化して後輩に投げてしまいます。(それが先輩の仕事でもあります)定型業務なので、別に私がやる必要ないですし、誰がやってもある程度結果は同じになります。
なのでそのような定型業務は基本的に高賃金の正社員がやる必要はなく、低賃金の非正規雇用の労働者が担います。誰がやってもある程度同じ結果が得られるわけですから、わざわざ高い賃金の者に仕事を振る道理が無いのです。
それゆえに、高い賃金を得ようと思うのであれば、非定型業務を担える先輩にならねばならず、そのため率先してBさんの環境に身を置くべきであり、Aさんの状況に居て「上司が手取り足取り教えてくれる」なんて喜んでいる場合ではないのです。しかし残念ながらそれを分かっていない人がよく言う定型業務を担う人材に自らを降格させる魔法のことばが「どうすればいいですか?」です。
常に「HOW」と「WHY」を考える
私自身が転職市場で職に困らないキャリアを送れている一つの肝は、「上司に「Yes/No」で答えさせる聞き方のみをする」という意識があります。
たとえば「新卒採用年間で10名」という仕事を任されたとします。
低年収にあえぐ人は「どうすればいいですか?」とか「昨年と同じで良いですか?」と聞きます。
一方で私は「学校訪問で母集団を500名集めようと思います。ただし採用人員が3名は必要になるので、佐藤さんと吉田さんを補助につけたいのですがいかがですか」と聞きます。
両者の違いはわかるでしょうか。
低年収にあえぐ人は「HOW(どうするのか?)」と「WHY(なぜその手段を取るのか?)」を全然考えていません。一方で転職市場で価値が高い人はそれらをすべての業務に於いて考え抜いてきます。そして、転職の面接では問われるのは「HOW」と、特に「WHY」です。
もちろん、働く方にとっては「HOW」や「WHY」を考える事はすごく難しいですし、時間もかかるのでやらない方がマシに見えます。
しかしそういう訓練を受けてきたりチャンスをものにして来た者でなければ、まともな転職が出来ない時代になっています。長期的にみると、若いうちから「HOW」や「WHY」を考え抜いて自分を鍛えておいた方が、後々安定した人生を送れるようになっているのです。
今からでも遅くない!自分の市場価値を高める方法
30歳以上の方で、主担当の業務について「HOW」と「WHY」を細かく答えられない方は要注意です。しかし、明日からの心がけ次第で転職には困らない人材へと昇華していくはずです。
- どうすればいいですか?は今後一切禁句。言う時は自分の葬式の時だけ!くらいの気概を持つ
- 上司や同僚には自分のプランに対して「Yes/No」しか言わせない
- 上司や同僚から「判断できないから○○という情報をくれる?」と言われたら、準備出来なかった自分を思いっきり悔しがれ
- 定型業務は徹底的にマニュアル化し、喜んで定型業務を引き受ける低年収者に回す
- 上司や同僚との関係は「経過報告と承認のみ」がベスト。連絡と相談は不要(という状況が望ましい)
- とは言っても、礼儀・雑談・飲みを含めたコミュニケーションは絶やすな(上司や同僚も人間)
以上です。事実、私の仕事中の態度ですが、なかなかうまくいっています。ただし、疲れますけどね(笑)
就活に「アルバイト経験」は使えるか
結論から言うと、使えます。ただし、用法用量を守って正しく使えれば、ですが。
今回は以下の論旨で進めたいと思います。
ちなみに、今回の「就活」には中途採用も含まれます。中途採用において、アルバイト経験しかない人も参考になるかもしれません。
アルバイト経験を何故アピールするのかを明確にする
就活の目的は自分の志望する企業に内定を取る事です。内定を取る為には、企業に認められなくてはなりません。
企業が採用活動をする場合、普通は「こういう人が欲しい」という欲しい人材像が設定されています。
- 男性
- 従順
- 転勤可
- 英語のスキルあり
- 開発部長と気が合いそうな人
- 面接官の好み(!)
こんなかんじ。もちろん、こういったホンネ(でしばしばクリティカルな部分)は外に出て来ませんから、建前や企業情報からホンネを推測する訳です。
そのホンネと、自分の経験や素質が合致すれば、晴れて内定となる訳です。つまり、就活とは、企業が求める人材像に対して、自分の経験や素質を披露し、マッチングを図る市場行動なのです。
その辺りはこちらをどうぞ↓↓
onikuma.hatenablog.jp
さて、あなたがアピールするアルバイト経験のエピソードは、企業が求める人材像のどれを満たすのでしょうか??もっと言うと、アルバイト経験を話す事によって、相手にどう思われたら成功と言えますか??
1.あなたがアルバイト経験を話す
↓
2.相手があなたを「こんな人だ」と思う
↓
3.「こんな人だ」が企業の求める人材像と一致する
↓
4.内定に近づく
こういう図式にならないといけません。
その為にはまずアルバイト経験を面接の場で言う目的を明確化する必要があるのです。
これは何でもいいです。責任感、協調性、忍耐力、はもちろんのこと、可能性を早めに見限る資質、「適度」に法律を破る資質、仲間の不正を糾弾した正義感、など場合によってはマイナスに作用するものまであり得ます。
まずはこれを確定させましょう。
嫌われるアルバイト経験談の特徴
アルバイト経験を話す目的を意識してアピールを構成しないと、それはたいてい嫌われるアルバイト経験談になります。
嫌われるアルバイト経験談とはいかの性質を複数個備えたアピールです。
- 何を言いたいのか分からない
- アピールの根拠が相当甘い
- 頑張りました!アピール
順々に説明します。
何を言いたいのか分からない、とは、「へー凄いね。で、だから何?」とツッコミを入れたくなるようなアルバイト経験談です。
ありがちなのは事実の羅列です。
こういう事実を、淡々とアピールする人が居ますが、「聴いてる人に何を思わせたいのか」がいまいち分かりません。
よって、最低限キチンと「どう思われたいのか」は言うべき。
など、アピールするべきです。
次に、アピールの根拠が相当甘い、は一番多いパターンです。
- 売り上げ3倍を達成しました!だから御社の売り上げにも貢献できます!
- 仕入れのスキルが身につきました!だから仕入れの基本は分かります!
というアピールをしていたら、要注意です。理由はアピールの論旨に「アルバイトで実績上げたんで、社会人でも実績挙げられます!」という部分があるからです。
面接官のオジ様達は言葉悪いですが、アルバイトや学業の功績をナメてます。
正社員として結果を出す>>(超えられない壁)>>アルバイト・学業・ボランティアで結果を出す
という功績ヒエラルキーが頭の中にあるのです。
実際にはアルバイトでも、ノルマがあったり、種々のハラスメントがあって大変でしょう。しかし、それでも正社員のノルマやハラスメントとは雲泥の差があるのです。いや、雲泥どころか、働くとは正社員で激務に耐える事を意味し、学業やアルバイト、ボランティアでの功績は働く事になーんにも寄与しません。
学業やアルバイトでの輝かしい功績ごときが正社員の激務を耐える能力がある証明にはなりません。正社員の激務をナメた、相当甘いあまあまなアピールです。
・・・と、おじさま達は考えてるとみていいです。
なので、「アルバイトで実績上げたんで、社会人でも実績挙げられます!」という論旨は絶対禁止、欠片も見せないようにしましょう。
最後に、頑張りましたアピールとは、以下のようなアピールです。
えっと、バイトでも、派遣でも、正社員でも、ボランティアでも、頑張るのは当たり前です。言われた事を全力で取り組む、なんて、当たり前過ぎてアピールにも何にもなんないんですね。アピールをする為には、言われない事でも率先して取り組んだとか、言われた事以上の成果を出すように工夫したとかが必要です。
つまり、100の成果を出せと言われて、100の成果を出す為に頑張るのは当たり前で、101にする為に自分の裁量の範囲で何が出来るか考えて行動して101の成果が出たか、がアピールなのです。
そこでは101を目指す人もいれば、110を目指す人、更には101にする為に一人でやる方法を取る人、二人でやる方法を取る人、など大きなオリジナリティが出てきます。このオリジナリティが採用の肝であり、採用担当者が深く知りたい所なのです。
アルバイトで101を目指す方法は例えば以下の通りです。
- 品出しをする役目を任されたが、品出しと同時に検品出来る方法はないか考えた
- レジ打ちを任されたが、自分だけでなく全員のレジ能力向上を考えた
- おでんの販売ノルマを課せられたが、おでんと同時に売れるものが無いかを考えた
こういう考えの基に、毎日10時間位費やして観察して、考えて、実行して、結果を出したというアルバイト経験ならものすごく武器になるはずです。
一方で、言われた事を毎日10時間必死に頑張ること自体にはなんの価値もないという事を覚えておいてください。
嫌われるアルバイト経験談とは何かをもう一度まとめると
- 何を言いたいのか分からない
- アピールの根拠が相当甘い
- 頑張りました!アピール
です。
鬼クマさん流「アルバイト経験」アピール法
では、どのように「アルバイト経験」をアピールすれば良いか、をまとめます。
具体的に説明します。
まず、企業がどんな人を欲しがっているかを推測します。急進的な成長をしているのか老舗か、大量採用か少数精鋭か、大企業か中小企業か、長期負債は多いか少ないか、どういった大学出身者を採用しているのか、出来たらホームページではなく実績値がいいです。有価証券報告書とか就職四季報などで確認します。
中途採用の場合はエージェントに「最近その企業ではどういう人が採用されているか」を聞きます。基本的にエージェントは内定までは嘘は言いませんので、信用していいです。
これで、例えばその企業では「スピード」「改革」「起伏」「男女不問」を備えた人材を探している事が分かります。
次に、「スピード」を求められる環境で101を目指したアルバイト経験があるかを思い出します。
「改革」が求められた時に101を目指したアルバイト経験があるかを思い出します。
絶好調の時に150%とか一時的にもの凄い実績を挙げたアルバイト経験があるかを思い出します。
上記が当てはまらなければ、その企業は諦めてください。諦めきれなければ、今やっているアルバイトでそういう経験を作ってしまいましょう。
そして、その経験に「謙虚さ」というトッピングをまぶします。
例えば「レジ打ちに1時間掛かっていましたが、ベテラン社員並みの50分に短縮できました。だから、御社のスピードにも対応できます!」ではなく「レジ打ちに1時間掛かっていましたがベテラン社員並みの50分に短縮できました。御社のスピード感にはまだまだ及ばないと思いますが、入社時には何とかついていけるように今の内から日々スピードを意識して過ごしています。」です。
そのようにアピールすれば、アルバイト経験は大きなものになるはずです。
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たまにはこういう「お役立ち」系も良いかもしれないですね(笑)☆とかブックマークとかいただければこういった「お役立ち」系をもっと載せていきたいと思います。
あと、ビジネスには正解はないので、実践しても効果の100%保証は出来ません。しかし就活本にも本質的にほぼ同じ事が書かれているはずなので、効果はあると思います。
*1:それでも突き進む場合は相当厳しいです