鬼人事クマさんのブログ

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ONIKUMAの叫び 〜「しなくていい事を徹底的にしない人生でした」というアピール

皆さんこんばんは!今回は久しぶりに採用の話!


今は面接官をしていませんが、過去に面接官をしていた日々を思い返すと「出来なかったことを出来るようになった」というアピールをする受験者(もちろん中途採用の人も含めて)が多かったなーと思います。


受験者のみならず、就活本でも「どんな小さなことでもいいから、出来ない→出来るに至ったストーリーを探せ」みたいなことがよく書かれ、過去に自分が行った面接のアドバイスでも同じ事を違う表現で語っていた気がします。


確かに「出来なかったことを出来るようにする事」は社会人にとって必要不可欠な能力であり、面接の結果を左右する重要なファクターであることは間違いありません。


「出来なかったことを出来るようにする」の対義は「出来なかったことを出来ないままにする」であり、実は人事が採用した結果、採用した人間がそういう素質を持っていた事が判明すると一番ガッカリしますし、配属された現場もそういう社員を一番嫌がります。「え?そんなの出来ません。不可能です。」「え?どうすればいいんですか?」という言葉が一番最初に出てくるような社員です。


なので、面接官に「この受験者は出来なかったことを出来ないままにする性質がある」という判断をさせてしまったら、その瞬間に面接は終わります。どんなに高学歴でも、良いところに就職は出来ないです。


それゆえ「出来なかったことを出来るようにする」ストーリーは必ず考えておかなければならないのですが、残念ながら受験者のほぼ全員が必ずこれをアピールします。受験者は手を変え品を変え同じ事をアピールしてくるので、余程の経験をしていない限り「またか・・・」と面接官はウンザリモードに突入し、顔で笑いながら頭のなかで今日のランチメニューを考えだします。

■需要と供給で考える

「出来なかったことを出来るようにする」という経験や性質は、面接の成否を左右する重要なファクターであるのは間違いありません。しかしあまりにも同じアピールをされるので面接官はウンザリモードになってしまうのです。


ではどうしたらいいのでしょうか。


ここで「需要と供給」を考えます。「需要」とは面接官が「こういう労働力がほしい」というニーズであり、「供給」とは「こういう労働力を提供します」という受験者の能力です。その需要と供給をマッチさせるべく「面接」を含めた採用という市場が形成されています。


つまり

  • 面接官「こういう人欲しいよ〜〜〜」
  • 受験者「私はこういう人だよ〜〜〜」

をマッチングさせる為に就活や採用活動があります。

なので、面接官の「こういう人欲しいよ〜〜〜」を理解するのは供給者にとって非常に重要ですし、そういった「需要」にピッタリと当てはまるように「私はこういう人だよ〜〜〜」と自分を「供給」していくのは正しい姿です。*1


面接官の需要は「出来なかったことを出来るようにする」社員である事は間違いありません。しかし、現状では需要に対してそれを供給する受験者が多すぎるのです。ですから、確かに100という大きな需要があるのですが、それに対して10000も供給があれば、供給側の過当競争になるのは必然です。

需要と供給で考えた場合に「出来なかったことを出来るようにする」というのは供給過多なフィールドで争う事になりかねない、とても不利なアピールです。あ、もちろんそれが需要側の高いニーズである事には間違いがないので、そういう素質を持たない人(という判断を面接官にされる人)はまず認められないのをお忘れなく。

■潜在需要を突く

では受験者は何を「供給」すればよいのか。ここでは「需要」が高いにもかかわらず、「供給」が低いものを狙っていくべきです。つまり、「面接官が重要だと思っているけれども、受験者がまずアピールしない」ものです。図で書くとこんな感じ。


「え・・・?それが分かったら苦労しません(苦笑)」


その通りですね。就活本にはありとあらゆる「需要」と、それに対する「供給」の仕方が載っています。なので実際「面接官が重要だと思っているけれども、受験者がまずアピールしない」事など無いように思われます。


しかし、ですよ。実はたくさんあります。


仕事とは、「問題の連続」です。
人事部なら「労務」、教育部なら「社員の低レベルさ」、総務部なら「言うこと聞かない営業部」、営業部なら「規則で業務を縛り付けてくる総務部」などの部署間の問題。
部長なら「意のままに動いてくれない課長」と「気が変わりやすい経営者」、課長なら「自己啓発してくれない低スキルな主任」と「現場を分かっていない部長」、主任なら「出来ませんを連呼する新人」と「下に厳しく上司にへつらう課長」という役職の問題。
正規雇用なら「最後に責任を負うのは自分たちなのに“同じ仕事をしている”と胸をはる非正規雇用や派遣社員」、非正規雇用なら「同じ仕事をしているのに給与や待遇が倍も違う正規雇用」という立場の違い。


外から情報が得られる「競合」や「市場」といった情報以外にもそういった内部の問題が企業には多数隠れています。それらに常日頃から晒されながら面接官は業務をこなしています。面接官も含め、会社員には「そういった内側の諸問題を解決してくれるような人材がいたら・・・」という切実な想いがあるのです。


しかし「部署間の問題を解決してくれるような人材募集!!!」など、人事部が対外的にアピール出来るわけがありません。「部署間の仲が悪い企業なのか??」と受験者に思われてしまい、受験者を集められなくなってしまいます。それゆえそういった「身内の恥的な問題を解決してくれる人」という「需要」は採用という市場から外されてしまうように思えます。


しかし、確かに「需要」としては顕れませんが「潜在需要」としては当然残っています。表に現れている需要と潜在需要の違いは、受験者が面接で「御社の部署間の対立を解決します!」という潜在需要をもろに突いたアピールをしても撃沈しますが、受験者が上手く自分を「供給」し、面接官に「この人はもしかしたら部署間の対立を解決してくれるかも??」という想像をさせると非常に上手くいくということです。


当然のことながら潜在需要は外から分析するのは非常に難しいです。さらには、その会社に勤める会社員自身が気が付いていないこともありえます。それを正規雇用として就職したことが無い学生が見破るのは相当難しいでしょう。しかし、だからこそライバルたる他の学生が供給できない重要な価値になりえるのです。


そもそも、市場とは供給が多すぎては、高い価値もやがてその価値が低くなるもの。
美女も黄金も東大卒もお金も、それ自体に価値があるわけではなく、「美女が少ないから」「黄金が少ないから」「東大卒が少ないから」「お金持ちが少ないから」価値が生まれているのです。
それゆえ、就活も市場であるという認識をしたならば、就職活動も供給が少ない高い価値の供給を狙っていくべきです。

■無駄な仕事をしない人はほとんどいない

さて、会社員が等しく感じている問題ってなんでしょうか。そして、受験者がほとんどアピールしない価値ってなんでしょうか。先に答えを言いますが、会社員は「無駄な仕事が多い」という問題を須らく抱え、受験者は「無駄なことをしてきませんでした」というアピールをほとんどしません。


会社員の仕事は無駄の塊です。無駄、とは、いくら素晴らしい出来栄えを誇っても、そのことにいくら熟練したとしても、ほとんど何も利益に繋がらないことです。会社員にはそういう仕事がいっぱいあります。例えば、目的が曖昧な会議や二度と閲覧しない資料作り、意味不明な朝礼や到達点が不明な研修会など、数えたらキリがありません。経営者を頂点として末端の平社員まで、そういう無駄な仕事を排除しながら価値ある仕事に如何に取り組めるかが「会社員普遍不変の問題」なのです。


一方で学生さんも含め、特に一度就職を経た中途採用受験者も「仕事をやる素質あります!」「仕事が出来ます!」というアピールはガンガンしてきます。しかし「仕事をしてきませんでした!!」というアピールは全くという程してきません。それゆえ「仕事が出来ます!」というアピールはオーソドックス(=供給が多い)なだけに純粋な真剣ガチ勝負になります。供給多い状態で、ライバルと同じ土俵でよーいどんと競争しなければならないのです。


もちろんそれで勝てる、つまり他者よりも優れた実績などの「仕事ができる価値」があれば、思う存分供給しちゃっていいと思います。しかし、ラーメン屋を出店するとして、ラーメン激戦区どまんなかに突入する位の自信がなければ控えたほうがいいでしょう。一流のラーメンを食いまくってきた一流面接官を唸らせるような「ラーメンの味」を出せるのか、良く自問してください。


しかし一方で、「仕事をしてきませんでした!」はどうでしょうか。そもそものアピールのベクトルが違いますので、まずライバルは圧倒的に少ないことが予想されます。それだけにこの部分を突けば大きく目立てます。必ず成功するとは限りませんが、真剣ガチ勝負で勝つよりも少ない労力で大きく勝てるでしょう。先のラーメンの出店で例えると、ラーメン激戦区で「ラーメン配達専門店を出店する」ようなものです。ラーメン有名店との「味」や「ブランド」によるガチ勝負では到底かなわないので、それ以外の「食いに行かなくても、向こうから来てくれる」という「価値」に目をつけるわけです。


実際に私が面接官であったら以下の様なアピールは注目に値します。

  • 私は極力勉強しないで卒業し、会社員としてなるべく高い生涯賃金を得られるように考えて行動しました。科目選択の際は先輩に「どの講義が簡単に単位が取れるか」を調査し、また、将来需要が高まる希少性が高い分野はどこか、を検証した結果、外国語は英語ではなく人数が少なく単位認定が甘いウルドゥー語を学習し、経済学の授業ではマルクス経済学ではなく、人数が少なく不人気の進化経済学論を選択しました。
  • 私は前職では徹底的に業務をサボりました。まず与えられた全てのタスクに明確な目的・目標が設定されていないものについてはその再定義を行うようにし、それすら出来ないようなタスク*2に対しては理由を付けて実施しませんでした。ただし、実施しないことに対する対策は万全にしておきました。しかしながらそれらを実施しないことで不利益に繋がった事は一切ありませんでした。


全ての企業でこれが通用する、つまり、採用される価値観かどうかはわかりませんが*3、供給過多のフィールドで普通の人が戦うよりも余程相手の需要に応えられるはずです。

                  • -

「仕事をしてきませんでした!」とアピールする〜〜〜???はぁ???無理無理!!受かるわけない!!と思っているアナタ!


「仕事をしてきませんでした!」というアピールをしろっていう元面接官なんてあまり居ませんよね??「出来なかったことを出来るようにする事をアピールをする方法」について私が語ったところで、リクナビさんやマイナビさんの記事より説得力のある印象的な記事を私が書けるでしょうか??


書けませんよね(笑)


だから、違う土俵で戦わないといけないんです。需要者に選んでもらえなくなります(つまり、価値が無いも同然)
そう、東大生と「勉強できます!」の土俵で就活を戦ってはいけないのと同様に・・・・。

*1:もっと言えば、「供給」がスムースにされていない需要者たる企業や団体は、正しく「供給者」に「こういう人欲しいよ〜〜〜」とアピール出来ていないのである。つまり、採用で苦戦している企業は「最近採用が厳しくなった」という前に「自分たちが正しく供給者にアピールできているか」を省みるべきである

*2:例えば「前例踏襲」とか「歴史があるから」とか「辞める理由がない」とか

*3:この世界には「仕事に無駄な事なんてない!」という驚愕な考え方を持って働いている労働信者が少なからず居るので