「どうすればいいですか?」はあなたの年収を下げる魔法のことば
転職経験3回、10年以上人事をやっていると、いろいろな人を見てきます。
新卒で採用されて、順調に主任に上がるもの、上がらないもの。
中途で採用されるも頭角を現さずにどんどん埋もれていくもの。期待通りの成績を残すもの。
派遣社員で活躍し、正社員を凌駕する実力を備えつつも、制度の壁は越えられずに苦悶するもの。辞めるもの。
本当にいろいろな人を見てきましたが、「出来ない人」の特徴には一つの共通点がある事を数年前に発見しましたのでお伝えします。
これは中途新卒関係ありません。年齢も関係ありません。役職は・・・関係あります。
「どうすればいいですか?」を平気で聞く
これです。この言葉を上司や同僚にすぐ投げかける人で出世している人や、いわゆる「デキる」人を見たことがありません。
仕事は大まかに2種類に分かれます。一つは定型業務、もう一つは非定形業務です。
そしてほぼ例外なく以下の関係性が成り立ちます。
- 定型業務・・・答えが分かる。低賃金。ミドルリスク・超低リターン。誰がやっても成果の質は同じ。量は異なる
- 非定型業務・・・答えは分からない。高賃金。ハイリスク・超高リターン。人によって成果の質・量ともにものすごく異なる。
さて、冒頭の「どうすればいいですか?」は定型業務に対する答えを聞いている状況です。つまり、「どうすればいいですか?」と聞いて答えが返ってくるとしたら、その人は定型業務しかやっていない証拠です。
ずっと仕事を続けていると、早晩、低賃金にあえぐことになるか、または転職できずに今の職場にしがみつくことになります。これは100%間違いありません。いっぱいいろんな人を見てきた中で、そして自ら転職市場に身をさらす中で実感してきた体験知です。
たとえば「人を笑わせる業務」という仕事を請け負ったとします。そこで「どうすればいいですか?」と上司や同僚に聞いたとしましょう。
そこでAさんは「お笑い芸人を呼んで。予算は120万円くらいだから、経理に決済もらっておいて。」と先輩から優しく指示を受ける環境で過ごしたとします。一方でBさんは「そんなの分かんねぇから、自分で考えてやってくれ」と先輩から厳しく放置される環境で過ごしたとします。
- Aさん・・・何をすればいいか指示をくれる環境に身を置く
- Bさん・・・何をすればいいか自分で考えないといけない環境に身を置く
Aさんは「お笑い芸人を呼ぶ」「経理に決済をもらう」という仕事をします。もちろん、笑わすことが出来ないという失敗をしてしまう事はAさんには訪れるでしょう。しかし、Aさんの失敗は先輩の責任になります。
Bさんは「相手をくすぐる」という暴挙をします。もちろん、確実に失敗してしまいますからBさんは激しく怒られます。そうしてBさんは自分の考えがとても幼稚であると自覚、反省し、勉強し、考え方を鍛えていきます。
さて、両者が3年経つとどのような人材になっているでしょうか。
- Aさん・・・どのような仕事をすべきか考えられないが、指示された業務を的確にこなす社員になる
- Bさん・・・指示された業務は的確にこなせないが、どのような仕事をするべきか考えられる社員になる
さて、会社に依頼する仕事の大本をたどれば、そのほとんどが非定型業務です。
- 人を笑わせる
- 売上をあげる
- 痛みを取り除く
- 美味しいものを提供する
これらは「これをすれば100%完璧!」な答えなど存在しません。全国民をいかなる状況でも笑わせられるコメディアンなんていませんし、どんな痛みも取り除く万能鎮痛剤もありません。
よって、仕事を引き受ける場合には「まずは何をやるべきか?!(やらないべきか?!)」を考える必要があり、その答えがないからこそ人によってそのアウトプットが大きく左右されるものであり、その報酬も青天井が付くものになります。
しかし、「人を笑わせる業務」という非定型業務を引き受けたとしても、先輩がそれを「お笑い芸人を呼ぶ」と「経理に決済をもらう」という仕事に分解してしまい、それを定型業務化して後輩に投げてしまいます。(それが先輩の仕事でもあります)定型業務なので、別に私がやる必要ないですし、誰がやってもある程度結果は同じになります。
なのでそのような定型業務は基本的に高賃金の正社員がやる必要はなく、低賃金の非正規雇用の労働者が担います。誰がやってもある程度同じ結果が得られるわけですから、わざわざ高い賃金の者に仕事を振る道理が無いのです。
それゆえに、高い賃金を得ようと思うのであれば、非定型業務を担える先輩にならねばならず、そのため率先してBさんの環境に身を置くべきであり、Aさんの状況に居て「上司が手取り足取り教えてくれる」なんて喜んでいる場合ではないのです。しかし残念ながらそれを分かっていない人がよく言う定型業務を担う人材に自らを降格させる魔法のことばが「どうすればいいですか?」です。
常に「HOW」と「WHY」を考える
私自身が転職市場で職に困らないキャリアを送れている一つの肝は、「上司に「Yes/No」で答えさせる聞き方のみをする」という意識があります。
たとえば「新卒採用年間で10名」という仕事を任されたとします。
低年収にあえぐ人は「どうすればいいですか?」とか「昨年と同じで良いですか?」と聞きます。
一方で私は「学校訪問で母集団を500名集めようと思います。ただし採用人員が3名は必要になるので、佐藤さんと吉田さんを補助につけたいのですがいかがですか」と聞きます。
両者の違いはわかるでしょうか。
低年収にあえぐ人は「HOW(どうするのか?)」と「WHY(なぜその手段を取るのか?)」を全然考えていません。一方で転職市場で価値が高い人はそれらをすべての業務に於いて考え抜いてきます。そして、転職の面接では問われるのは「HOW」と、特に「WHY」です。
もちろん、働く方にとっては「HOW」や「WHY」を考える事はすごく難しいですし、時間もかかるのでやらない方がマシに見えます。
しかしそういう訓練を受けてきたりチャンスをものにして来た者でなければ、まともな転職が出来ない時代になっています。長期的にみると、若いうちから「HOW」や「WHY」を考え抜いて自分を鍛えておいた方が、後々安定した人生を送れるようになっているのです。
今からでも遅くない!自分の市場価値を高める方法
30歳以上の方で、主担当の業務について「HOW」と「WHY」を細かく答えられない方は要注意です。しかし、明日からの心がけ次第で転職には困らない人材へと昇華していくはずです。
- どうすればいいですか?は今後一切禁句。言う時は自分の葬式の時だけ!くらいの気概を持つ
- 上司や同僚には自分のプランに対して「Yes/No」しか言わせない
- 上司や同僚から「判断できないから○○という情報をくれる?」と言われたら、準備出来なかった自分を思いっきり悔しがれ
- 定型業務は徹底的にマニュアル化し、喜んで定型業務を引き受ける低年収者に回す
- 上司や同僚との関係は「経過報告と承認のみ」がベスト。連絡と相談は不要(という状況が望ましい)
- とは言っても、礼儀・雑談・飲みを含めたコミュニケーションは絶やすな(上司や同僚も人間)
以上です。事実、私の仕事中の態度ですが、なかなかうまくいっています。ただし、疲れますけどね(笑)