軽減税率バンザイ!な件
多くの商品にかかる消費税が10%に上がるのにあわせ、一方で指定品目の消費税を8%(以下の可能性も)に抑える軽減税率が話題になってますね!
8%以下に据え置いた・下げた分の税収減はどうするんだ、とか、軽減される品目が政治的圧力によって決まる、とか議論が噴出してますが、個人的には軽減税率の導入は大いに賛成です。それは以下のようなメリットがあるからです。
国民が「決まりを作るめんどくささ」を認識できる
会社で就業規則を作ったり校正した人、社内通達を出した人など、何か「決まり」を作ったことがある人なら分かると思いますが、法律では“言葉の定義”が一番めんどくさくて、しかも重要なんです。
たとえば、「全従業員は9:00~17:00まで勤務する事」という当たり前の決まりを作るじゃないですか。すると従業員の中には「9:00~17:00に勤務する事」を快く思わない人とか損害を被る人とかが必ず出てくるんです。
すると彼らは「従業員」や「勤務」という言葉の定義に注目して
- 私は派遣社員なので従業員ではない!、とか
- 携帯電話で上司の指示を受ける体勢は出来ている。たとえ家にいても携帯電話を持っているから勤務とみなされるべきだ!、とか
あれこれ言ってくるわけです。
そう言われないために、法律などの決まりごとを作る場合には、この「言葉の定義」ってやつをメッチャ考えて文字に起こすんです。
たとえば、「労働者」の定義ですが以下のリンクのⅠ~Ⅳを見てください。
「労働のセンター」殿より「労働基準法の適用労働者」ページ
たかが言葉一つの定義に原稿用紙18枚分の記述が必要なんて何のコントかと思ってしまいますよね?
さて、今回の軽減税率に於ける対象品目の定義は「労働者」の定義なんかよりもよほど直接的に、全国民と企業の売上にかかわってきます。
案の定、すでにワンサカと「あれこれ言おうと構えてる人たち」がいます。労働者の定義ですら原稿用紙18枚にもなるんだから、軽減税率の対象品目の定義では何ページになるんでしょうね。非~~~常に楽しみです!
そして、紛糾し嵐吹き荒れるこの軽減税率コントを通して、少なくない国民が「決まりを作るのってめんどくせーんだなぁ!」と気付くはず。
実は私はこの気付きこそが国民の大きなメリットになると思っています。
世の中を変える!とか自分の思い通りに人や物を動かす!とか金持ちになってやるぜ!と思って実行し、実績を出している人には共通点があります。
- 「決まりを作るのってめんどくせー」と思った経験、と
- それを乗り越えて決まりを作った経験
がメチャメチャあることです。
会社勤めしている人なら、あなたの上司を見てみればよくわかると思います。あなたより確実に多くの「決まりを作って、反対派からあれこれつつかれて、しかし撃退した」経験があります。
松下幸之助も、曹操も、ガンディーも、孫正義も、みんな「決まりを作るのってめんどくせー」と思い、決まりを作っても方々からあれこれを突かれて(時には軍隊を向けられて)、しかしそれを乗り越えて立派な実績を出してきました。
つまり、決まりを作れる人になれないと、決して富や権力は得られないんです。
しかし、この「決まりを作るのってめんどくせー」という認識は、体得する事はおろか、間近で見る事すらなかなか出来ません。
たとえば皆さんはどうやって日本の法律や今いる会社の就業規則、学校の校則などの「決まり」ができたのか分かりますか?私は分かりません(笑)
いざそういった「決まり」を作らないといけない状況になって初めて「自分には余りにも決まりを作った経験がない事」に愕然とする人は多いと思います。
教育現場では今から「決まりを作る」より既に出来上がった「決まりを守らせる」事に重きを置いていますので、どうやって決まりを作るかについてはなかなか見る事はできません。先生が権力によって決まりを作る「上意下達式のやり方」はたくさん見られますが(笑)
職場でも新人が決まりを作るなんて役目を担えませんし、決まりを作る立場になる人もそう多くはありません。就業規則や契約書を書いたり、書くのを見たりする人はほんの一握りでしょう。
大多数の国民はもしかしたら、結婚して家庭を持つに至って初めて家庭内での「決まりを作る」経験をするのかも。
でも、軽減税率の対象品目の決定作業においては「決まりを作るのってめんどくせー」がリアルに、私たちにも身近で分かる形で目の前に顕れます。
軽減税率は国民や企業の関心も高い事項だけに、マスコミはその対象品目の決定の経過をおおざっぱに報道するわけには行きません。
他のテーマではめんどくせー所(=売れないところ,報道機関に都合の悪い所)を隠せても、軽減税率というテーマについては事細かに、経緯を含めて国民に情報を流してくるはずです。
これが、法人税の引き下げや厚生年金保険料の値上げなどではこうはいきません。
私たちの日々の暮らしに直接影響するわけではないので、読者もそこまで関心を寄せません。
それゆえ、「決まりを作るのってめんどくせーんだなぁ!」な面白くないリアルで醜い駆け引きの部分は徹底的に隠され、結果だけが報道されたりします。
下手したら「国は厚生年金保険料の値上げをあっさり決めやがって!」なんて誤解してる人も居るんじゃないですかね??
水面下でめっちゃめちゃ反対派から突かれまくっているはずなんですが、つぶさに報道はされないから私たちが知らないだけだったりします。
その点、軽減税率の導入は全国民の日々の生活に如実に関わってきますから、水面下に潜って議論するには限界があるので、様々な醜い駆け引きが表に確実に出てきますよ!
「決まりを作るのって、めんどくせーんだなぁ!」と認識する大チャンスですね!
このめんどくささを認識して、今後の人生において意識的に「反対勢力のいちゃもんをかわし、決まりを作る経験」を積めば、その人はもっと豊かに生きられるようになるはずです。
その為に、軽減税率について国会で繰り広げられる政治コントをしっかり見て、「めんどくせ~なぁ!!」という感想を確り胸に刻むべきです!こんなチャンス滅多にありませんからね!
政治的に力のある団体がどこなのかが分かる
企業は売上にダイレクトに反映されるため、自社製品を軽減税率の対象品目に取り入れたいと思っています。一方で政府は、それを認めれば認める程税収が減るので、なるべく対象品目を設定したくないと思っています。
お互いの利害が完っ璧に相反しているんですね。これはおもしろい状況です。
政府としては100%イヤイヤだけどしかたなく軽減税率の対象品目を選んでいます。つまり、軽減税率の対象品目というのは「政府が選ばざるを得ない何らかの理由」が必ずあるということです。
「政府が選ばざるを得ない何らかの理由」は通常、水面下で検討され、それを分かりにくい形に加工して表にでますが、軽減税率のいいところはその結果が極めて分かりやすい「値段」という形で顕れるところです。
宗教法人と農家への政府の優遇っぷりは酷いものですが、「なぜ優遇しているかという理由」も含めて、議論の経緯や結果はメチャクチャ分かりにくい形で顕れているので国民にはなかなか伝わりません。
法人所得税とか法人住民税とか労災保険料の雇用主負担とか生産緑地とか、一般の人はほとんど知りません。
しかし、軽減税率の場合は極めてシンプルでわかりやすいですよね!
物を買う時にお金を支払うのは小学生でも分かりますし、中学生ならば商品には消費税が含まれている事もわかります。
そこに、特定の商品群だけ「110円(内税10円)」のように消費税表記が変わるんです!
もしかしたら「軽減税率対象商品!!」などと、スーパー等の小売店が積極的に商品をアピールするかもしれませんね。
つまり、軽減税率は全国民に優遇の結果が非~~常にわかりやすい形で示されるんですね!
ほら↓↓
- 聖教新聞としんぶん赤旗、大手新聞社の定期購読新聞は軽減税率!駅の売店やコンビニで買う新聞は対象外!
- 大手新聞でも紙媒体は軽減税率!電子版やネットの有料メルマガは対象外!
- 生鮮食品と加工食品は軽減税率!外食は対象外!
- 農業用トラクターは軽減税率!自家用車は対象外!
- 医療費は軽減税率!教育費は対象外!
どお??わっかりやすいでしょ??*1
日本における各産業界の力関係がこれほどよくわかる結果が政治の世界で出てくる事はなかなかありません。
さらにさらに!
普通、政府から不当に優遇されている側は優遇されている事をひた隠しにする方向に動くものです。
しかし、軽減税率の良いところは、ある業界団体が軽減税率を適用されて優遇されようと思えば思うほど、それを「値段」という国民に最高に分かりやすい形で明らかにしなければならないところです。
だからといって、優遇されていることがバレないように動いた結果、製品が10%の消費税になってしまえば直接売り上げを大きく減らされます。
結果的に、軽減税率を導入すると、なるべく表に出ず、こっそりと甘い汁を吸い続けたい政治力の大きな団体も、その影響力を表に出さざるを得ない状況になるわけです。
しかも、政府はなるべく軽減税率の対象品目を認めたくない姿勢なので、政治力が無い業界団体の製品群を、「お情け」とか「目くらまし作戦*2」で意図的に取り込む事とかできません。
つまり、政治力の大きな団体の製品に軽減税率を適用した一方で、政治力の小さな団体の製品には情け容赦なくキッチリと10%の消費税を充てようとしますから、その対比も浮き彫りになり、紛れも少なくなります。
「どの業界団体の声を聞いて政府は動いているのかが、わかりやす~く提示される」
これは国民にとっては大きなメリットですね!
政府が国民のどの層を向いて政治をしているのか分かる
新聞が軽減税率の対象品目になる理由って
ニュースや知識を得るための負担を減らすためだ。新聞界は購読料金に対して軽減税率を求めている。読者の負担を軽くすることは、活字文化の維持、普及にとって不可欠だと考えている
「日本新聞協会HP」より
って事なんだけど、軽減税率を導入する目的ってこれだよね↓↓
しかし、消費税は所得の低い人ほど負担感が重くなる、いわゆる逆進性があります。(中略)だからこそ、食料品などの生活必需品の税率を低くする軽減税率を導入することで、負担感を軽減する事ができます。
「公明党HP」より
つまり
- 所得の低い人でも消費税負担割合が高くならない(逆進性の解消)、のと
- 新聞が所得の低い人の生活必需品である
の両方が満たされて初めて新聞の軽減税率の意味をなすんだけど、所得が低い人は紙の新聞を定期購読するの?っていう疑問。
新聞を読んでいる人の平均年収を調べると、日本新聞協会からデータがありました。
2013年データがこれ↓↓
※M1F1層=20~34歳
「一般社団法人 日本新聞協会,2 0 1 3 年全国メディア接触・評価調査報告書結果の概要」より
この図表から読み取れる事は以下のことです。
- 新聞を読む若者は、読まない若者よりも、持ち家率は27%多い
- 新聞を読む若者は、読まない若者よりも、年収は27%(143万円)多い
- 新聞を読む若者は、読まない若者よりも、金融資産が107%(300万円)多い
およよ??
このデータだけ見てみると*3、明らかに所得の低い人ほど新聞を読まない傾向があるといえます。軽減税率って、消費税の逆進性を解消させるのが目的じゃなくて??
新聞を定期購読する人って、平均年収で140万円も多いんですよ??
逆進性の解消を目的とするなら、新聞こそ“加重税率”が正しいんじゃない??
新聞以外にも、軽減税率の対象品を見ていくと色々分かりそうです。
たとえば、化粧品です。
働く女性は、働くのが好きな方を別にして、できれば働きたくないと思っています。
専業主婦に代表される人たちは、働かなくても暮らしていけています。*4
さて、働く女性と専業主婦は、どちらの所属世帯が裕福でしょうか?
そして、化粧品の消費が激しいのは、働く女性と専業主婦と、どちらでしょうか?
外食で店内で食べると対象外、もちかえると軽減税率というのも色々わかりますね。
家で食べる人=世帯所得の低い人、外食で店内で食べる人=世帯所得の高い人というイメージからこのような判断をしたかもしれませんね。
けど、これホント??
働かなければならない人と働かなくても生きていける人、どちらがレストラン等で食事を摂りますか??
働かなければならない人は労働しますので、相対的に時間がありません。つまり、自炊に割ける時間も相対的に少ないです。一方で、働かなくても生きていける人には労働時間がありませんので相対的に時間があります。つまり、自炊にかける時間は相対的に多く取れます。
どちらが”外食で済ませよう!”という動機が強いですか?
いや、「外食は高いから、家で自炊しよう!」って選択ができるのはどちらの人ですか?
そして、働かなければならない人と働かなくても生きていける人、どちらの世帯所得が多いですか?
平均給与所得が年々減っている日本で、何でファーストフードだけが益々栄えているかを考えれば、家で食べる人=世帯所得の低い人という図式の怪しさがよ~~くわかりますよね。
インターネット回線や固定電話料金が軽減税率になるのか、も面白いです。
インターネットを利用しているのは、主に若い人です。
固定電話を引いているのは、主に持ち家を持っている比較的年配の方です。
ここのデータにもあるように、50歳以上の44人が金融資産の84%を占め、49歳以下の56人が残り16%を分け合っている状況なのですが、所得の低い層への消費税負担の逆進性をなくすのであれば、どうすれば良いかわかりますよね。
若い人が良く使い、年配の方がほとんど使わないモノに積極的に軽減税率を適用するんです。*5
そうすれば、逆進性の解消は達成されると思いますが、紙媒体の新聞への軽減税率の適用をあっさり決定し、電子版には適用するかどうか分からないと答える政府だとそれは絶望的だと思うのは私だけかも?
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以上、軽減税率の導入とは、一言でいえば「本音が見える」ということです。しかもその「本音」が生活の最も身近なところで如実に現れます。
所得税や社会保険料の累進課税、たばこ・酒などの課税品目からも「本音」は見えますが、ほとんどの人は月に1回以下しか見られないです。
ですので、毎日、しかも何かを買うたびに見られる消費税に「本音」が上乗せされるなんて、こんな機会滅多にないです!軽減税率、ほんとバンザイですね!