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鬼人事クマさんのブログ

御社の社畜を探します!採ります!育てます!

定年上限引上げで新卒採用が危ない?!

さてみなさんこんばんは!!

今回は昨今流行の定年引き上げについて、「えっ?!マジかよ」というニュースから

http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20100807-OYT1T00989.htm

 【ロンドン=是枝智】英国政府は、2011年4月から、65歳としている民間企業の定年制を廃止する方針案を明らかにした。
 半年間の移行期間を設けたうえで同10月から完全実施する。
 高齢化社会に対応するのが狙いだ。産業界は強く反発しているが、英国では緊急時などの場合、政府の権限で法改正できるため、実施は確実な情勢だ。
 政府は、財政悪化などを理由に、公的年金の支給開始年齢(男性は65歳、女性は60歳)を30年以上かけて段階的に68歳まで引き上げることを決めている。
 65歳超で働いている人が現在約80万人いることも踏まえ、定年制自体を廃止するのが適切と判断した。
 定年制を完全廃止にするのは珍しく、英国に拠点を置く日系企業にも影響を与えることになる。
 英国では06年、企業が年齢を理由に労働者を差別することを禁じるほか、65歳未満の定年を定めた企業の社内規定を原則無効にする「年齢差別禁止法」が施行された。
 日本では06年度に施行された改正高年齢者雇用安定法で、定年の引き上げ、継続雇用制度の導入、定年制度の廃止――のいずれかの措置を講じるよう企業に義務づけている。
(2010年8月8日03時23分 読売新聞)


■定年が段階的に引き上げられる
上のニュースはイギリスでの話しなんだけれど、日本でも年金需給年齢の引き上げに伴い、似たような話は議論されてくるはず。っていうか、もう議論されてる。

http://www.jeed.or.jp/elderly/employer/subsidy/subsidy30-2.html
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/kourei2/

現行では、従業員が65歳まで働けるように経営者は“配慮”する義務があります。配慮すれば良い話なので60歳定年後に雇用する義務はないのですが、“配慮”が足りないと判断されると、“再雇用不能”理由書出せとか、抜き打ち査察するぞ、とか、“配慮”計画書だせ、とか、チクチクお役所&労組から言われ(略
まぁつまり、“配慮要請と言う名の強制”ですね。はい、こういうのすごくあります。良くあります。


どうやら日本では国を挙げて「死ぬまで働いてください」というスタンスで今後も運営されるらしいです。


確かに社会保障費の財源不足が叫ばれる中、そのような施策を採る事で、問題を回避しようという“意気込み”は良く分かるです。わたくしも新卒採用をどげんかせんといかんという“意気込み”はありますが、政治のプロがそれをやると・・・ねぇ。政治上の失策のツケを企業に回さないで頂きたいです。ひいては若い世代に回さないでください。なぜなら、どうみてもこれは現役世代にしわ寄せが来るシステムだと思うんですよ。

上図は過去の60歳定年での課員の人件費を考えてみたケースです。
点線より右側が5年以内に退職を迎える55歳以上の人です。また、人件費が枠です。そしてその中で部長の賞与から新人の給与まで支払われます。そして、枠の割合が給与所得です。良く見ると新人は部長の1/6しか貰ってない図ですが、まぁ、実際は“そんなに部長は貰っていない”とか“新人はもっともらっている”などあるかもしれません。とりあえずモデルケースということで我慢して下さい(笑)


図では、人件費という大枠の中で、高齢労働者と若年労働者が仲良く並存しています。年功序列・新卒採用が問題なく回っている状況です。毎年必ず一定不変の人件費が宛がわれ、60歳で必ず役職付きの高給取りが辞めていく状況です。この状況下では、毎年一定数の人間を採用できる新卒採用も非常に合理的といわざるを得ません。このシステムを堅持する為には、新人が一定以上入って来て、かつ、部長まで勤め上げて貰わないと困ります。毎年必ず点線より右側が抜けるのですから、人員が足りなくなります。人員の充足を不安定な中途採用に頼ってしまっていては、このサイクルを回す事に余計な労力がかかります。そこで、新卒採用という“金銭コスト”も“労働コスト”も“人員が充足しないリスク”も“採用後に転職されるリスク”も非常に低いシステムが受け入れられたという訳です。


注目点としては以下です
●枠自体の大きさ=人件費総枠は変動していない
●高齢であればあるほど、領域が増える=高給取りとなっている
●新人を順調に採用できる

上図はこれからの人件費を考えてみたケースです。
5年後に60歳以上になる方が赤い点線より右側に位置している方です。一方で、65歳までは再雇用制度を活用して継続してサラリーを貰う事も可能ですが、60歳でリタイアする方も半数近くいます。よって、黒い点線の右側が60歳以上で本当にスッパリ退職をする方です。

高齢労働者が5年間退職を伸ばすだけで、現役世代に必ずしわ寄せが来る事が見て取れると思います。人件費枠は固定であり増えないので、その枠内でやりくりするしかありません(多少の補助金が出るようですが、焼け石に水。しかも大企業は出ない。加えて申請が煩雑になので、受給するには事務処理コスト増に繋がる)。結果として、新卒採用が控えられる訳ですが(理由は後述)、少数しか新人が採れなくなった結果、彼等には重い責任と過重な労働が待っています。しかしながら、貰える対価は定年が延びた高齢者が人件費を圧迫している状況なので、推してはかるべきです。

注目点としては以下です
●枠自体の大きさ=人件費総枠は変動していない(実際は確実に減る)
●高齢であればあるほど、領域が増える=高給取りとなっている(年功序列が維持されている)
●新人の採用が減っている


■退職しても高給取り
定年間近の高齢労働者は新卒者の平均2倍〜3倍は貰っていますので、半減でも新卒並みの給与になっとります。実際には70%は、退職直前の半分以上は貰えている状況です。せっかく高給取りの高齢労働者が定年を迎え、人事部が「高給取りが居なくなった」と安堵に暮れていても、再雇用制により引き続き雇用し続けないといけないのです。


「完全職務給にしちゃって、新卒の半分の年収で雇用する」というのも手ですが、しかし、それでも2人採用すると1人の新卒正社員の人件費枠が失われます。また、新卒の半分の年収で雇用は、打診すら非常に困難な状況です。なぜならば、定年退職者は“正社員になりたい”“もっと給与欲しい”という、驚くべきニーズがあり、今まで正社員として培ってきたノウハウや人脈を駆使して、有利な雇用条件を引き出す事は必至です。そういう抵抗勢力を敵に回して(ある時は元上司を敵に回して)、サラリーマンである人事部が完全職務給を断行できるとは思えません。だったら、新卒を絞ろう!となるわけです。


■調整弁は新卒採用しかない
もちろん、人件費の総枠が増えれば、定年退職者の再雇用費用は賄えます。しかし、このまま行くと人件費総枠は増えない事は火を見るより明らかです。日本はサービス残業大国です。1分単位まで人件費をケチろうとする経営者が後を絶たない中、人件費の総枠を増やす事がどれほど大変な事か想像に難くないと思います。果たして今後、長引く不景気が底を打ち、景気が上向くとして、彼らの人件費を無理なく賄えるようになるかな??私はならないと思います。空前絶後な大好況か、世界各国の大企業や高額納税者が日本を目指すなど、日本に冨が集中する状況にならないと、難しいんじゃないでしょうか。っていうか、そんな状況だと、年金も60歳からしっかり払えるし、この問題も霧散しますね(笑)


定年後再雇用者に充てる人件費が無いならば、作り出さないといけない、けれども現役社員の減給は出来ません。なぜなら、現状では正社員の給与を下げる事は合理的理由が無いと出来ないからです。例えば非常に経営が悪化している状況で、多額の赤字を計上していれば給与を下げる事は可能かと思いますが、赤字も出していない、役員が賞与を十分貰っているような状況では現役社員の給与を下げる事は難しいです。つまり、現役社員の給与総額から工面は出来ないわけです。第一、会社がピンチでもないのに人事部長が自分の給与を下げる決定をするでしょうか


んじゃどうするか?? 新しく入ってくる者の給与総額を下げるかパート・派遣を切るかしかない訳です。実際には両者の併用かと思います。
新卒採用を考えてみると、昨年は20万円だった初任給を19万にすると、学校の就職指導課やキャリアセンター、そして有名な大企業ではリクルート社や新聞社に理由を問われます。それに答えるに“定年退職者の再雇用のための人件費を賄うためです。若い世代に我慢して貰います”なんてとてもじゃないけど言えません。なので、初任給は20万据え置きで採用数を削って総枠を抑えるんです。これだと理由は問われません。問われても“先行きが見えないので・・・”などとお茶を濁しておけば大丈夫です。人事部はこういう言い訳をとても好みます。